メタン発酵(読み)メタンハッコウ(その他表記)methane fermentation

デジタル大辞泉 「メタン発酵」の意味・読み・例文・類語

メタン‐はっこう〔‐ハクカウ〕【メタン発酵】

メタン生成菌有機物を嫌気的に分解すること。生ごみや家畜糞尿からメタンを発生させ、バイオガスとして利用することができる。

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改訂新版 世界大百科事典 「メタン発酵」の意味・わかりやすい解説

メタン発酵 (メタンはっこう)
methane fermentation

湖沼堆積物汚泥反芻(はんすう)動物の胃の内部など,酸素のない嫌気的条件で,微生物の作用によって有機物が分解されて,メタンが可燃性のガスとして発生する現象。メタン生成に直接関与する微生物は,細菌の中でもとくに酸素に対する感受性が高い偏性嫌気性菌に属するメタン生成細菌であるが,この細菌は水素炭酸ガスまたはギ酸から次式のようにメタンを生成する。

この反応は,炭酸ガスまたはギ酸を最終電子受容体として,水素を酸化する一種嫌気呼吸と考えることができる。メタン生成細菌の細胞成分や核酸塩基配列は,一般の細菌とは著しく相異し,進化の過程で相互に大きくかけ離れたものと考えられる。最近では好塩性細菌の1種であるハロバクテリウムHalobacteriumなどとともに古細菌(アーキバクテリアarchaebacteria)とも呼ばれ,生物進化に関する興味ある研究材料となっている。

 メタン発酵は,動植物遺体など複雑な有機物が嫌気条件下で,偏性嫌気性細菌の1種であるクロストリディウムClostridiumなどによって分解,発酵されて炭酸ガス,ギ酸,水素を生成する前段階と,それらの生成物からメタン生成細菌によってメタンが生成する過程との2段階から成っている。前者は酸発酵過程,後者はガス発酵過程といわれ,多種類の嫌気性菌によってこの両過程が同時に並行して進行する。

 メタン発酵は,有機廃棄物を分解除去して環境汚染を防ぐと同時に,発生するメタンを燃料として利用しうる方法として有用である。小規模な嫌気発酵槽を用いて農畜産廃棄物を処理する方法の普及が図られる一方都市下水,工場廃水の活性汚泥処理にともなって発生する余剰汚泥を消化・減量し,メタンを回収する目的で,大規模なメタン発酵槽が建設・運転されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「メタン発酵」の意味・わかりやすい解説

メタン発酵
メタンはっこう
methane fermentation

メタン細菌と呼ばれる嫌気性微生物によって行われるメタンの生成。メタン細菌は水素ガスを酸化することによってエネルギーを獲得し,この過程で炭酸ガスを還元してメタンを発生する 4H2 + CO2 → CH4 + 2H2O。また,メチルアルコール,ギ酸,酢酸などからもメタンが生成される。一般に,メタン発酵は混合培養系で行われ,糖,蛋白質,脂質などをメタン細菌の利用しうる物質にまで分解する多数の微生物が関与しており,ビタミン B12,特にメチル B12がメチル運搬体として重要な働きをしている。ある種のメタン細菌では,メチル B12からのメチル基がコエンザイムM (HS-CH2CH2SO3-) と名づけられた化合物に移されたのち,メタンに還元されるといわれている。メタン細菌にはビタミン B12がかなり多量に含まれている(→ビタミン B12 発酵)。

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化学辞典 第2版 「メタン発酵」の解説

メタン発酵
メタンハッコウ
methane fermentation

有機物で汚れた湖沼や河川の泥のなかにいる嫌気微生物の一種メタン細菌が行う代謝で,有機物をメタンと二酸化炭素と水とに分解する複雑な過程の最終ステップ.[別用語参照]ヒドロゲナーゼ

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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