付加体(読み)フカタイ(英語表記)accretionary prism

デジタル大辞泉 「付加体」の意味・読み・例文・類語

ふか‐たい【付加体】

海洋プレート大陸プレートの下に沈み込む際、その境界となる海溝の陸側に形成される地質構造海底の表層部からはぎ取られた堆積物が、海洋プレートの沈み込みに伴い順次陸側に付加する。海溝に直交する断面がくさび型をしているため、付加プリズムともいう。日本列島多く部分はこれらの付加体群で構成される。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「付加体」の意味・わかりやすい解説

付加体
ふかたい
accretionary prism

海洋プレートが沈み込むとき、海洋底に堆積(たいせき)していたチャートや、海溝で堆積した砂岩泥岩互層などの砕屑(さいせつ)物が、衝上(しょうじょう)断層によって剥(は)ぎ取られたり底付けされたりして、陸側のプレートに張り付くことを付加作用という。このようにして張り付いた堆積物を付加堆積物、付加堆積物による集合体を付加体という。断面で見たとき、海溝の陸側の付加体の部分は三角形の形をしているため、これを付加プリズムとよぶ。また、付加堆積物が分布する地帯を付加帯とよぶこともある。

 付加体には、チャート→珪質(けいしつ)泥岩→泥岩→砂岩泥岩互層および砂岩という一連の層序をもつ地層(チャート‐砕屑岩シーケンス)が認められることが多い。これは、海洋プレート上で、遠洋性のチャートから始まり、陸に近づくにつれ珪質泥岩となり、海溝で泥岩および砂岩泥岩互層などが堆積するためで、プレートの移動に伴う堆積場の横の変化を反映している。チャート‐砕屑岩シーケンスが衝上断層で何回も繰り返しているとき、見かけの地層の積み重なり方は同じでも硅質泥岩・泥岩などは海溝側のほうが若くなることが多い。これは、海溝側にあるもののほうが、より後から海溝に到達したために、海溝での泥岩などの堆積年代が若くなるためである。衝上断層に伴ってデュープレックスが形成されたり、沈み込みに伴ってチャートや砂岩などのブロックが泥岩中に取り込まれたメランジュも形成されたりする。西南日本外帯の秩父帯(ちちぶたい)や四万十(しまんと)帯に多く存在するメランジュは、このようにして形成されたものが多いと考えられる。また、玄武岩質の海山や、その上に堆積した石灰岩が、泥岩基質に取り込まれることもある。秋吉石灰岩などの大規模な石灰岩体は、このようにして付加したものである。

 造山帯には付加作用で形成された地質体が多くあり、とくに日本列島のような、長期にわたって海洋プレートの沈み込みを受けた地域には、異なる時期による付加体が形成されている。古生代ペルム紀付加体の秋吉帯中生代ジュラ紀の美濃(みの)‐丹波(たんば)帯、秩父帯北帯および三宝山(さんぼうさん)帯、中生代白亜紀から新生代古第三紀の四万十帯などは、その代表例である。これらの付加堆積物は、かつて地向斜堆積物とされたものである。地向斜・造山運動論は、プレートテクトニクスに基づく付加体説の登場によって、その役目を終えた。

[村田明広]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「付加体」の意味・わかりやすい解説

付加体
ふかたい
accretional complex

海洋プレート海溝で大陸プレートの下に沈み込むとき,海洋プレートを構成していた地殻や海底堆積物がはぎ取られ,陸側に付加してできた地質体をさす。沈み込む海洋プレートは,中央海嶺で生成されたあと,海洋底を横滑りしながら海溝へと向かってくる。この過程で海洋プレートには,玄武岩,遠洋性堆積物が堆積し,海溝に近づくと,陸源性の堆積物である砂岩泥岩に富むようになる。付加体の地質構造は,四国南部に分布する四万十帯の研究で明らかになり,日本列島内帯を構成する美濃・丹波帯などは,中生代のプレートの沈み込みでできた付加体であることから,ジュラ紀付加体と呼ばれている。ジュラ紀付加体における遠洋性堆積物は層状チャートである。また,プレートの沈み込みに伴って,海洋プレート上に形成された海山が付加することもある。西南日本に分布する石灰岩体は,古生代の大洋にあった海山の頂部にできた石灰岩質のであり,二枚貝,巻貝,ウミユリ類フズリナなどの,古生代に繁栄したさまざまな化石を含んでいる。付加体では,先に付加した地質体の下に,次々と新しい堆積物が入り込んでいくので,玄武岩,層状チャート,砂岩・泥岩からなる堆積物の重なりが,断層を挟んで繰り返すような地質構造になっている。こうした地質構造をデュープレックス構造という。

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百科事典マイペディア 「付加体」の意味・わかりやすい解説

付加体【ふかたい】

海洋プレートが海溝トラフなどの沈み込み帯で沈み込むとき,海洋底の堆積物がはぎ取られて陸側に押しつけられてできる構造体。海溝より陸側の斜面先端部にいくつもの逆断層で繰り返し積み重なった構造を示す。沈み込み帯では,海洋側から大陸側にかけて,海溝,付加体,前弧海盆,陸棚,島弧,背弧という順に配列する。
→関連項目イスア岩体南海トラフ日高変成帯

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