日本大百科全書(ニッポニカ) 「モアッサン」の意味・わかりやすい解説
モアッサン
もあっさん
Ferdinand-Frédéric Henri Moissan
(1852―1907)
フランスの化学者。初めは薬剤師の徒弟として、ついで自然史博物館のフレミEdmond Frémy(1814―1894)などから学び、苦学してバカロレア(中等教育終了資格・大学入学資格)を取得、1879年にパリの薬学専門学校で薬学士、翌1880年にパリ大学で博士の学位を受ける。無機化学を研究し、1882年に結婚してからは義父の財政的援助で研究に専念できるようになり、同年薬学専門学校の教授資格を取得した。1884年からフッ素化合物を研究、1886年にフッ素の単離に成功した。同年に薬学専門学校の毒物学教授に任命され、1899年に同校の無機化学教授、1900年にパリ大学の教授となる。また、人造ダイヤモンドの製造を試み、そのための実験用電気炉をくふうし、高温化学の創始者となった。1894年にカルシウム・カーバイドの製造法を発見し、これからほぼ純粋なアセチレンが発生することを報告した。1906年ノーベル化学賞を受け、遺産によりモアッサン化学賞、妻の名をつけたルガン化学賞が設置された。
[加藤邦興]