ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヨシュア記」の意味・わかりやすい解説
ヨシュア記
ヨシュアき
Yehoshua; Book of Joshua
ヨシュア記は,以下の3つの部分に分割される。カナンの征服 (1~12章) ,イスラエル民族間での土地の分配 (13~22章) ,ヨシュアの告別の辞と死 (23~24章) 。カナンを所有することは,幾度となく繰り返されたイスラエル民族の父アブラハムに対する約束の成就であったので,ヨシュア記は通常,聖書の最初にある六つの書からなる一つの文学的編成の完結と見られてきた。この見解をもつ神学者たちは,ヨシュア記の中に先の書の中で発見されるものと同じ資料の記録を見出そうと試みている。しかし,現在ではヨシュア記を続く書で継続される歴史の始まりと見る傾向が強まっている。
ヨシュア記の著者は,イスラエル人がかつては手にした土地を失い,バビロニアに捕囚として連れて行かれた時代に生きていた。彼が語る歴史は,祖国を再び取り戻そうという望みに彩られているのはそのためである。約束の地の最初の征服は,大変熱を込めて語られ,征服にはヤハウェの助けがあったことを聖書史家は繰り返し強調している。さまざまな部族への土地の分配は,イスラエルにまったく所属しなかった領土やあるいはかなりあとになってイスラエルが手にした所までを含んでいる。このことがまた,イスラエル国家のかつての栄光がいつかは回復されるという聖書史家たちの希望を反映しているのである。ヨシュアの告別の辞 (24章) は,カナンの地においてヤハウェがイスラエルを守るための条件を説いている。肝心な個所は以下の点である。「もしあなたがたが主を捨てて,外国の神々に仕えるなら,あなたがたをしあわせにしてのちも,主はもう一度あなたがたにわざわいを下し,あなたがたを滅ぼし尽くす」 (24・20) 。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報