日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨルダン鉱」の意味・わかりやすい解説
ヨルダン鉱
よるだんこう
jordanite
鉛とヒ素の硫塩鉱物の一つ。ジェオクロン鉱geocronite(化学式Pb14(Sb,As)6S23)とともにヨルダン鉱系を構成する。自形はb軸に扁平(へんぺい)な擬六角板状。普通は集合して腎臓(じんぞう)様の輪郭をもつ。比較的低温生成の熱水鉱床あるいは交代鉱床に産する。日本では青森県平川市湯ノ沢鉱山(閉山)から産する。共存鉱物は閃亜鉛鉱(せんあえんこう)、ウルツ鉱、砒四面銅鉱(ひしめんどうこう)、方鉛鉱、津軽鉱tsugaruite(Pb4As2S7)、グラトン鉱gratonite(Pb9As4S15)、重晶石、苦灰石などである。
同定は輪郭が出ていればわかるが、ジェオクロン鉱とは識別しがたい。六角板状の形態は、一方向に発達する劈開(へきかい)とともに、ジンケン鉱zinkenite(Pb9Sb22S42)に類似するが、ジンケン鉱は正確に六角板状、ヨルダン鉱は擬六角板状である。命名は最初の標本提供者であるドイツ(ザールブリュッケン)のヨルダンH. Jordan(1808―1887)にちなむ。
[加藤 昭]