日本大百科全書(ニッポニカ) 「ライネス」の意味・わかりやすい解説
ライネス
らいねす
Frederick Reines
(1918―1998)
アメリカの実験物理学者。ニュー・ジャージー州パターソン生まれ。スティーブンズ工科大学で工学を修めて1939年に卒業、同大学の大学院で数理物理学で1941年に修士を取得した。さらにニューヨーク大学で宇宙線を観測する実験についての研究を行い、1944年に博士。物理学者のR・ファインマンに誘われ、ロス・アラモス国立研究所で原子爆弾開発のためのマンハッタン計画に参加した。1951年にサバティカル(アメリカの大学、企業などで7年ごとに与えられる長期有給休暇)の長期休暇をとり、1947年からの懸案だったニュートリノ研究を、同僚のコーワンClyde Cowan(1919―1974)と始めることを決意。ワシントン州ハンフォードにある原子炉を利用する実験構想を1953年にまとめた。実験は、塩化カドミウムを含んだ約400リットルの水の中で、原子炉で発生したニュートリノが飛び込んだときにおきる反応を調べるものであったが、1950年代に実施した一連の研究では、反電子ニュートリノをキャッチ。1938年にノーベル物理学賞を受賞したE・フェルミが1930年に予言していたニュートリノの存在を、初めて実験的に確認した。ニュートリノ発見後の1959年に、クリーブランドのケース工科大学(現、ケース・ウェスタン・リザーブ大学)へ。1966年から1988年まではカリフォルニア大学アーバイン校の教授を務めた。ニュートリノ発見の業績により、タウ粒子を発見したM・パールとともに1995年のノーベル物理学賞を受賞した。
[馬場錬成]