ラシュリエ(読み)らしゅりえ(英語表記)Jules Lachelier

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラシュリエ」の意味・わかりやすい解説

ラシュリエ
らしゅりえ
Jules Lachelier
(1832―1918)

フランスの哲学者。フォンテンブローの生まれ。高等師範学校(エコール・ノルマル・シュペリュール)教授。『帰納法の基礎について』(1871)で学位号を受けた。メーヌ・ド・ビラン、ラベッソン・モリアン、カントの影響下に、唯心論的・批判的観念論を展開した。中心的主題は、経験に現れるがままの世界の存在はいかなる条件を満たすべきか、いかにして世界は思惟(しい)の対象になるか、ということであったが、すべての存在の最終的根拠は人間精神の絶対的自発性であるという立場から、機械論目的論との融合を試みた。彼の講義は、ブートルーやベルクソンら多くの俊秀に深い影響を及ぼした。ほかに『心理学と形而上(けいじじょう)学』(1885)などがある。

[足立和浩 2015年6月17日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラシュリエ」の意味・わかりやすい解説

ラシュリエ
Lachelier, Jules

[生]1832.5.27. フォンテンブロー
[没]1918.1.16. フォンテンブロー
フランスの観念論哲学者。エコール・ノルマル・シュペリュール (高等師範学校) で学び,1864~75年教授。従来のクーザン派のドグマティズムに代えて,J.ラベッソン=モリアンとともに新唯心論をフランス哲学の主流とした。門下からは E.ブートルー,H.ベルグソンが出た。視学官などをつとめて教育行政にも重きをなした。主著『帰納法の基礎』 Du fondement de l'induction (1871) 。

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