ラーゲルクビスト(読み)らーげるくびすと(英語表記)Pär Lagerkvist

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラーゲルクビスト」の意味・わかりやすい解説

ラーゲルクビスト
らーげるくびすと
Pär Lagerkvist
(1891―1974)

スウェーデンの作家。1912年ウプサラ大学卒業後、パリに遊びフランス近代美術の影響を受け、処女詩集『モチーフ』(1914)を発表。第一次世界大戦後は夢幻的一幕物戯曲を書く。1920~1930年は南フランス滞在、オリエント旅行で過ごし、『永遠の微笑』(1920)、『不吉な物語』(1924)、自伝小説『真実の客となる』(1925)などの中・短編で神と人間のテーマを追究する。詩集『営火のもとに』(1932)、ナチス批判の短編『刑吏』(1933)、第二次世界大戦後の『バラバ』(1950)などの著作活動により1951年ノーベル文学賞を受賞する。その後は、詩集『夜の国』(1953)、中編『巫女(みこ)』(1956)、『アハスベルスの死』(1960)、『海上巡礼』(1962)、『聖地』(1964)と続く。これらの作品は、善と悪、神性と人性の二元的対立を一貫して追究。その結果手にする真実は実は空(くう)であり、さらに永遠の巡礼が続くという構成をとる。『永遠の微笑』以来変わらぬ彼の作家的姿勢で、つねに問題の提起に終わる。「問いかけの作家」と評されるゆえんであろう。作品の舞台設定は、初期キリスト教信仰への深い関心を示す。なお彼には、北欧作家に伝統的な長編大作はない。

[田中三千夫]

『尾崎義訳『バラバ』(岩波文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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