日本大百科全書(ニッポニカ) 「リチャーズ」の意味・わかりやすい解説
リチャーズ(Ivor Armstrong Richards)
りちゃーず
Ivor Armstrong Richards
(1893―1979)
イギリスの批評家。チェシャー県に生まれる。ケンブリッジ大学に学び、母校の教壇で講じたのち、1943年からハーバード大学教授(1963年以後名誉教授)。心理学を基礎にした『文芸批評の原理』(1924)や『実践批評』(1929)によって現代批評を先導し、ことにニュー・クリティシズム(新批評)に多大の影響を与えた。心理学者オグデンCharles Kay Ogden(1889―1957)との共著『意味の意味』(1923)も貴重な業績であるが、のちオグデンの主唱するベーシック・イングリッシュBasic Englishにも関心が向かう。著書はほかに『科学と詩』(1925)、『修辞学原論』(1937)、『ベーシック・イングリッシュとその活用』(1943)など。詩集もある。
[岡本靖正 2018年8月21日]
『石橋幸太郎訳『意味の意味』(1969/新装版・2008・新泉社)』▽『岩崎宗治訳『文芸批評の原理』(1970・八潮出版社)』
リチャーズ(Dickinson Woodruff Richards, Jr.)
りちゃーず
Dickinson Woodruff Richards, Jr.
(1895―1973)
アメリカの内科医、心臓カテーテル法進歩の貢献者。ニュー・ジャージー州に生まれ、1917年エール大学(文学)を卒業した。第一次世界大戦に従軍したあと、コロンビア大学で医学を学び、1923年に卒業した。1931年からベルビュウ病院で、フランスのクールナンと共同で、右心の生理学的・病理学的研究を行った。彼らは、ドイツのフォルスマンの開発した心臓カテーテル法により、右心房の血液ガスの恒常値計測、心拍出量の正確な測定、一定時間の心臓カテーテル挿入の無害性などを発表した。リチャーズは1945年コロンビア大学教授、ベルビュウ病院研究所長となり、1956年クールナン、フォルスマンとともにノーベル医学生理学賞を受けた。
[古川 明]
リチャーズ(Theodore William Richards)
りちゃーず
Theodore William Richards
(1868―1928)
アメリカの化学者。画家と詩人の両親の下で早くから才能を発揮し、18歳でハーバード大学を卒業、20歳で学位を得た。1901年、33歳で母校の化学教授に就任した。彼の代表的な業績は、原子重量の精密測定で、1860年代にベルギーの化学者スタスによって求められていた実験値を全面的に改正した。またスタスは水素との重量比が整数値からずれる元素を発見していたが、リチャーズはウラン鉱に含まれる鉛と普通の鉛との重量の違いを発見(1913)、同年ソディが予測したアイソトープの存在を実証した。これらの業績により1914年ノーベル化学賞を受賞した。
[高山 進]
リチャーズ(Linda Richards)
りちゃーず
Linda Richards
(1841―1930)
アメリカ最初の有資格看護師。アメリカの看護師の母ともいわれる。1886年(明治19)来日し、京都看病婦学校、同志社病院で教師兼看護師長として4年9か月在職し、日本への近代看護の導入と定着化に大きな功績を残した。帰国後はアメリカ各地の多くの病院の総看護師長、看護学校校長を歴任した。
[山根信子]