スイスの作曲家エミール・ジャック・ダルクローズÉmile Jacques-Dalcroze(1865―1950)によって創案された音楽教育体系。古代ギリシア語のeurhythmiaに由来し、「律動的調和」を意味する。リトミックは、リズムや音に対して身体的に反応、行動することによって、諸感覚を鋭敏にし精神と身体を一致調和させ、集中力や自発性、表現性などを培い、技術、技巧によらない創造的な人間教育を目ざす。具体的には、〔1〕リズム運動、〔2〕ソルフェージュ、〔3〕即興演奏へと進む三段階からなる教科課程に沿って行われる。ジャック・ダルクローズはこのリトミックを音楽のみならず舞踊、演劇にも適用し、動きと音楽とことばを一体化させた総合芸術教育を打ち立てた。今日ではリトミックは世界各国に紹介され、教育や音楽療法の分野で普及しており、わが国でも国立(くにたち)音楽大学、桐朋(とうほう)学園などで採用され、研究されている。
[川口明子]
リズムに関する研究,訓練,とくにジャック・ダルクローズが創始した教育法をいう。身体の運動(基本は歩行)でリズムを体現し,音楽を聴覚だけのものとせず,身体活動(筋肉)と精神活動(頭脳)を統合した音楽表現を目ざす。人間活動における感覚・意識・行動の調和と発展をはかる音楽教育の一方法であり,音楽による教育の一方法でもある。
執筆者:永冨 正之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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