精選版 日本国語大辞典 「り」の意味・読み・例文・類語
り
〘助動〙 (活用は「ら・り・り・る・れ・れ」。ラ変型活用。四段、およびサ変動詞の命令形に付く。→語誌) 動詞連用形に「あり」を伴う語法で、熟合の結果「あり」の語尾の「り」が切り離された形で取り扱われるようになったもの。完了の助動詞。
① 主体または客体に状態の変化をもたらす運動が完成し、その結果として生ずる状態が持続していることを表わす。…ている。…てある。
※万葉(8C後)五・八四六「霞立つ長き春日をかざせ例(レ)どいや懐かしき梅の花かも」
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)九「時に彼の輪王は此こに住せりき」
② 主体または客体に何らかの変化をもたらす運動が完成し、その結果としてその痕跡が現にその場に存在することを表わす。…た。
※万葉(8C後)八・一五二三「秋風の吹きにし日よりいつしかとあが待ち恋ひし君そ来ませ流(ル)」
③ 主体または客体の状態が現に持続していることを表わす。…ている。
※万葉(8C後)五・八〇三「銀も金も玉も何せむに勝れ留(ル)宝子に及かめやも」
[語誌](1)従来、四段動詞の已然形、サ変動詞の未然形に付くと説かれたが、上代特殊仮名遣いの上では、四段活用動詞が助動詞「り」に接続する時の語尾のエ列音は甲類であって、通例乙類である已然形語尾とは異なるので、已然形と見ることは不適当で、これを、語尾が甲類である命令形に付くものと説くのが近年一般的である。サ変にも命令形に付くと説くことができる。ただし、これは、動詞の活用体系を六活用形とする慣例に合わせたもので、命令という機能に関係があると認めるわけではない。
(2)上代では、「り」がカ行上一段「着る」・カ変動詞「来」に付いた例がある。その際、動詞の形は甲類の「け」であって、これは連用形「き」と「あり」との結合と見られる。助動詞の「けり」もまたこれと関連する。
(3)東国の歌に見られる「筑波嶺に雪かも降ら留(ル)いなをかも愛(かな)しき児ろが布(にの)保佐流(ル)かも」〔万葉‐三三五一〕、「小竹が葉のさやく霜夜に七重か流(ル)衣にませる子ろが膚はも」〔万葉‐四四三一〕などの「る」も、この助動詞「り」であって、この場合は連用形語尾のiがaに吸収された形と解せられる。
(4)ラ変動詞型に付かないのは、「り」がもと「あり」であって、重複を避けたものと考えられるが、平安時代末期には「侍れり」の用法も現われた。なお、近代の擬古文には「居れり」「異なれり」の用法があるが、「居れ」は四段活用化したもの、「異なれ」は形容動詞が四段活用動詞に転用したものと認められる。
(5)平安時代以後、意味が近く、接続が自由な「たり」に勢力をうばわれるようになり、鎌倉時代以後になると、終止・連体形以外は次第に衰退した。
(6)鎌倉時代以後、下二段動詞などのエ列音に付く例がみられるが、これは、四段・サ変への接続がいずれもエ列音であるところから、類推によって生じたものであろう。
(2)上代では、「り」がカ行上一段「着る」・カ変動詞「来」に付いた例がある。その際、動詞の形は甲類の「け」であって、これは連用形「き」と「あり」との結合と見られる。助動詞の「けり」もまたこれと関連する。
(3)東国の歌に見られる「筑波嶺に雪かも降ら留(ル)いなをかも愛(かな)しき児ろが布(にの)保佐流(ル)かも」〔万葉‐三三五一〕、「小竹が葉のさやく霜夜に七重か流(ル)衣にませる子ろが膚はも」〔万葉‐四四三一〕などの「る」も、この助動詞「り」であって、この場合は連用形語尾のiがaに吸収された形と解せられる。
(4)ラ変動詞型に付かないのは、「り」がもと「あり」であって、重複を避けたものと考えられるが、平安時代末期には「侍れり」の用法も現われた。なお、近代の擬古文には「居れり」「異なれり」の用法があるが、「居れ」は四段活用化したもの、「異なれ」は形容動詞が四段活用動詞に転用したものと認められる。
(5)平安時代以後、意味が近く、接続が自由な「たり」に勢力をうばわれるようになり、鎌倉時代以後になると、終止・連体形以外は次第に衰退した。
(6)鎌倉時代以後、下二段動詞などのエ列音に付く例がみられるが、これは、四段・サ変への接続がいずれもエ列音であるところから、類推によって生じたものであろう。
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