デジタル大辞泉 「ぬ」の意味・読み・例文・類語
ぬ[助動]
1 打消しの意を表す。「まかぬ種は生えぬ」「思わず叫ぶ」「勉強をしない生徒がよい成績をとれるはずがありません」
2 (「てはいかん」「てはならぬ(ん)」の形で)禁止の意を表す。「高山植物を採ってはいかん」
3 (「ねばならぬ(ん)」「ねばなるまい」の形で)当然・義務の意を表す。「明日は会社に八時までに行かねばならぬ」
4 (「ずともよい」「ぬともよい」「んでもいい」の形で)許容・許可の意を表す。「君は行かずともよい」「風邪をひいているから風呂はわかさんでもいい」
5 (文末にあって「ん」「ぬ(ん)か」の形で)催促・勧誘・依頼の意を表す。「早く起きんか」「あなたも体操をなさいませんか」
「三谷さんに一服さしあげて下さいません?」〈康成・千羽鶴〉
[補説]打消しの助動詞は、共通語においては「ない」を用いるのが普通で、「ます」に続く「ん」以外の「ぬ(ん)」は、主に文語的表現や慣用句的表現に使われるだけであるが、関西を中心とする西部の方言では「ぬ(ん)」が広く用いられる。連用形「ん」は「んで」「んでも」の形で用いられる。
ぬ[助動]
1 動作・作用が完了または実現したことを表す。…た。…てしまう。…てしまった。
「夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいづこに月やどるらむ」〈古今・夏〉
2 (多く「なむ」「ぬべし」「ぬらむ」の形で)動作・作用の確認または強意を表す。きっと。確かに。
「春ごとに花のさかりはありなめどあひ見む事は命なりけり」〈古今・春下〉
「今度のいくさには相違なく勝ちぬとおぼゆるぞ」〈平家・七〉
3 (「ぬ…ぬ」の形で)動作・作用の並列または継続を表す。…たり…たり。…したし…した。→たり →つ →り
「備中守浮きぬ沈みぬし給ひけるを」〈平家・九〉