ルオー(読み)るおー(その他表記)Georges Rouault

デジタル大辞泉 「ルオー」の意味・読み・例文・類語

ルオー(Georges Rouault)

[1871~1958]フランス画家。黒く太い輪郭線、単純な形態、深く輝くような色彩特色とする。

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精選版 日本国語大辞典 「ルオー」の意味・読み・例文・類語

ルオー

  1. ( Georges Rouault ジョルジュ━ ) フランスの画家。モローに学んだのち、独自のフォービスム的画風を確立。黒く太い描線や暗色と輝くような色彩との対比によって、深い精神性・宗教性を表わす。キリスト道化などを繰り返し主題として描いた。(一八七一‐一九五八

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルオー」の意味・わかりやすい解説

ルオー
るおー
Georges Rouault
(1871―1958)

フランスの画家、版画家。ピカソ、マチスたちとともに20世紀を代表する画家の1人。5月27日、パリに家具職人の息子として生まれる。1885年からステンドグラス修復の工房に徒弟修業し、かたわら装飾美術学校の夜間コースに学ぶ。90年、絵画に専念することを決意し、エコール・デ・ボーザールのエリ・ドローネーの教室に学び、92年よりドローネーの後任ギュスターブ・モローの教えを受ける。モローの推挙でローマ賞を志すが二度にわたり失敗、学校をやめたあとリギュジェの修道院に入り、ここでユイスマンスたちと知り合い、内面的、宗教的な感情を養う。98年のモロー没後に旧宅に設置されたモロー美術館の館長を務め、1903年のサロン・ドートンヌの創立に参加。このころからルオーは、修業時代の基本的にはアカデミックであった主題と画法を捨てる。この、第一次世界大戦前後に至る初期には、尊敬する師モローの作品の影響下に水彩を主とし、幅の広い動的な筆触、青を基調とする色彩に託して、社会的な不正義に対する怒りと悲しみを、道化、娼婦(しょうふ)、裁判官、郊外の貧しい人々などの主題で描く。『鏡の前の娼婦』(1906・パリ国立近代美術館)などがその代表作。それらは筆触の強さ、色彩の表現性で、同時期のフォービスム、あるいはピカソの「青の時代」と類縁性をもつが、独自な精神性を備え、フランスにおける表現主義の表れとみることができる。

 1917年、彼は画商ボラールと専属契約を結び、以後、『ミセレーレ』(1917~27制作、1948刊)などの連作版画集に制作の大半の時間を費やしている。油彩を中心とするルオーの中期の制作もこのころに始まる。版画技法の習熟から得た広い筆触による隈(くま)取り、透明感のある緑・青・褐色を厚塗りする激しいマチエールなどの手法が用いられ、引き続き娼婦、道化、裁判官などの主題が描かれるが、初期における罪、絶望の表現とは異なり、静かな内面的世界が描かれる。とくに、30年代以降、キリスト教的なテーマが多くなり、それらが、しばしば道化、裁判官、郊外などのテーマと合体し、救済と恩寵(おんちょう)の世界へと転換してゆき、中世、ルネサンス以降、真の意味での宗教画家としてのルオーの世界が成立する。代表作は『ベロニカ』(1945・パリ国立近代美術館)など。45年のフランス東部のアッシーの教会のためのステンドグラスなども注目される。

 1952年ごろからの晩年の作品は、主題も多様化し、色彩も赤、黄色などが多くなり、マチエールの深さと相まって輝くようなきらめきを生んでいる。ボラールの死後、訴訟を起こして未完の旧作を取り戻し、48年にはそのうち315点を焼くという、ルオーの完全主義を物語る事件もあった。58年2月13日パリの自邸に没し、国葬が行われた。

 連作版画集『流星のサーカス』(1938)、『受難』(1939)などのほか、リトグラフ挿絵入りの『私的な思い出』(1925)、『独言』(1944)の著作もある。死後未完の作品約200点がパリ国立近代美術館に納められた。

[中山公男]

『P・クールティヨン解説、中山公男訳『ルオー』(1976・美術出版社)』『B・ドリヴァル著、高階秀爾訳『ルオー』(1961・美術出版社)』『柳宗玄解説『現代世界美術全集12 ルオー』(1972・集英社)』『イザベル・ルオー目録作成、柳宗玄他訳『ルオー全版画』(1979・岩波書店)』『高田博厚・森有正著『ルオー』(1976・筑摩書房)』

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百科事典マイペディア 「ルオー」の意味・わかりやすい解説

ルオー

フランスの画家。パリ生れ。初めステンド・グラスの職人であったが,1891年パリのエコール・デ・ボザール(国立美術学校)に入り,G.モローに絵画を学ぶ。同門にマティスマルケらがおり,やがて彼らとともにフォービスムの一翼をになった。このころの作品は,水彩やグアッシュで娼婦や芸人を描いたものが多く,黒,赤,青を基調とする色彩や激しい筆致によって社会に対する怒りや不安が表出されている。のち油彩に移り,ステンド・グラス風の太い黒の線で輪郭を描く特有の重厚な筆触で,宗教画の傑作を数多く残した。
→関連項目出光美術館サロン・ドートンヌバレエ・リュッスボラール三岸好太郎

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改訂新版 世界大百科事典 「ルオー」の意味・わかりやすい解説

ルオー
Georges Rouault
生没年:1871-1958

フランスの画家。パリに生まれ,少年時代にステンド・グラスの工房で徒弟修業。1890年画家を志し,翌年エコール・デ・ボーザール(国立美術学校)に学びマティスと知りあう。ローマ賞に2度失敗。98年,エコール・デ・ボーザールでの師G.モローの遺贈した美術館の初代館長となる。1903年サロン・ドートンヌの創立に参加。初期には,社会の不正義への怒り,人生の悲しみを,娼婦,裁判官,道化,郊外の貧しい人々などのテーマに託して,青を主調として描く。06年より画商ボラールと専属契約を結び,彼のすすめによって版画連作を試みる(《ミゼレーレ》《悪の華》《流星のサーカス》など)。中期の油彩は,色彩が豊かになり,透明感のある色彩が厚いマティエールの底から,ほとんど精神的といえるような輝きを生みだす。《聖顔》などの宗教的主題が,風景,道化,古き王たちなどと並んで主題の中核をなし,初期の絶望と罪の表現から,しだいに恩寵と救いの世界へと到達してゆく。45年,フランス東部オート・サボア県アッシーAssyの教会(1950献堂)のためにステンド・グラスを制作。真の意味で現代における唯一の宗教画家であり,フォービスムの周辺にあって,同じように大胆な色彩と激しい筆触による表現性を求めたが,方向はまったく異なり,孤高の表現主義的世界を生み出した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ルオー」の意味・わかりやすい解説

ルオー
Rouault, Georges

[生]1871.5.27. パリ
[没]1958.2.13. パリ
フランスの画家。家具職人の子として生れる。 1885~90年ステンドグラス職人の徒弟となり,シャルトル大聖堂のステンドグラス修復に従事。 91年エコール・デ・ボザールに入学し,G.モローに師事。 98年モローの死後,モロー美術館の館長をつとめた。初期にはモロー風の宗教画を描き,やがて青みがかった暗い色彩と強い線による水彩画を多く描き,独自の表現主義的様式を確立。 95年頃にローマ・カトリックに改宗した。 1903年頃から道化,娼婦などを画題としたが,次第にキリストが中心的な主題となる。 18年頃からは版画,油彩を多く制作,35~48年には光沢のある厚塗りの画面と,黒の輪郭による朱紅,紺,緑などの強い色彩が特徴となった。 48年にアッシー聖堂のステンドグラスを制作。主要作品『徒弟工』 (1925,パリ国立近代美術館) ,『聖顔』 (33,同) ,『道化』 (48,ボストン美術館) 。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ルオー」の解説

ルオー
Georges Rouault

1871〜1958
フランスの画家
ステンド−グラスの手法を生かし,悲惨と絶望に対する抵抗と救済を描いた現代の宗教画家。その死は国葬となる。マティスとともに代表的な野獣派の画家として知られる。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ルオー」の解説

ルオー
Georges Rouault

1871~1958

フランスの画家でフォーヴィズムの代表的一人。中世のガラス絵のような作風で,特に宗教画で知られる。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のルオーの言及

【モロー】より

…91年からエコール・デ・ボザール教授となり,自己の作風をおしつけることなく,生徒の個性を尊重する自由な教育方針で,多くの若手画家を育てた。モローを敬愛してその門下に集まった画家に,H.マティス,G.ルオー,A.マルケ,カモアンCharles Camoin,マンギャンHenri Charles Manguinらがおり,彼らは20世紀初頭,フォービスムを起こして新しい絵画動向を担った。生涯を送ったパリ,ラ・ロシュフーコー街の自宅は,死後,国に寄贈され〈モロー美術館Musée Gustave Moreau〉となった。…

※「ルオー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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