改訂新版 世界大百科事典 「レルド法」の意味・わかりやすい解説
レルド法 (レルドほう)
Ley Lerdo
メキシコのレルド・デ・テハダMiguel Lerdo de Tejada(1812-69)が大蔵大臣在任中の1856年に起草して制定された法令。教会の永代財産相続禁止と,教会活動に不可欠な不動産を除去した既所有財産の売買・運営の禁止を規定している。メキシコ市参事会議長をはじめ,勧業,外務,大蔵大臣を歴任した彼は,B.フアレスなどとともにレフォルマで保守反動勢力と闘った主要人物の一人であった。無定見のサンタ・アナ時代にメキシコの国土のほぼ半分がアメリカに割譲されたのを契機として,保守勢力の経済的基盤と結びつく教会財産を改革する機運が生じた。前年に制定されたフアレス法とともにレルド法は後続の改革法の序盤的役割を果たした。レルド法はその後,57年憲法の中に組み込まれ集大成されたが,同年中に反動的なスロアガFélix Zuloagaが憲法を破棄し,保守勢力が巻き返し,レフォルマは混迷を続けた。しかし,レルド法は立憲派と保守派の過酷な闘争史の中で,保守陣営の経済的基盤を脅かす先制攻撃の役割と,後の改革推進の大きな起爆力となった。フアレスとともに教会財産抑制を法律化したM.レルド・デ・テハダの業績は高く評価されている。
執筆者:大垣 貴志郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報