南ヨーロッパ,南西アジア,北アフリカ原産のキツネノマゴ科の耐寒性多年草で約20種がある。葉がアザミに似るため和名をハアザミというが,アザミの仲間ではない。属名のAcanthusはギリシア語のakantha(とげの意)に由来し,葉縁にとげがあることによる。本属の代表種ハアザミA.mollis L.は,長さ50cm以上で羽状深裂し,歯牙があって光沢のある大きい濃緑色葉を根生し,初夏のころ高さ1mをこす花茎を抽出し,白地に紫色脈のある大きい唇形花を長穂状に咲かせる。このほかトゲハアザミA.spinosus L.(=A.montanus T.Anders.),ナガバハアザミA.longifolius Poir.などの数種が栽培される。
庭園に植栽して観賞されるが,半日陰地でもよく育ち,性質が強く栽培しやすい。植え時は春,繁殖は株分けまたは根伏せによる。栽培地には石灰を施しておくとよい。
執筆者:柳 宗民
大きく上に向かって広がるアカンサスの根生葉は,装飾モティーフの一つとして取り入れられ,建築・工芸の分野ではこのモティーフをアカンサスacanthusと呼んでいる。古代ギリシア,ローマ世界で,柱頭装飾や陶画にさかんに用いられ,以後もヨーロッパ建築・工芸の装飾部分に多用された。ギリシアのコリント式柱頭,コンポジット式柱頭は典型的な例である。東洋でもアカンサスは,例えばインドのガンダーラ美術にみられるインド・コリント式柱頭などに,西方伝来の装飾モティーフとして,丸彫や浮彫の作例を多く残している。
執筆者:友部 直
コリント式柱頭の創始者といわれる前5世紀ころのギリシアの彫刻家カリマコスKallimachosには,アカンサスに関する次の伝説が語られている。コリントスのある少女が病死し埋葬された際,その乳母が故人の遺品をかごに入れ,上にタイルをかぶせて墓のそばに供えた。春になってアカンサスが生長してかごの外側を取り囲み,タイルにあたって折れ曲がっている様子を,たまたま見かけたカリマコスは,その新鮮な美しさに感動して,それをデザイン化した新しい柱頭様式をつくりあげたという。花言葉は〈美術工芸の賛美〉。
執筆者:荒俣 宏
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キツネノマゴ科(APG分類:キツネノマゴ科)ハアザミ属の総称。多年草あるいは小低木で、ヨーロッパ南部に約20種分布する。代表的な種類にハアザミA. mollis L.があり、庭園用として植栽される。葉はアザミに似て長さ約60センチメートル、幅30センチメートルのつやのあるみごとな根出葉で、8~9月ごろその中心より約1メートルの花穂を伸ばし、紫を帯びた白色の唇形花を穂状につける。ごくじょうぶな多年草であるが、耐寒性がやや劣り、東京地方では戸外でも越冬するが、寒い年は霜よけか土寄せをしないと凍死する。繁殖は4~5月ごろに株分けする。
本種の葉は造形的で美しく、ヨーロッパでは古代ギリシアおよびローマのコリント式やコンポジット式建築の柱冠の装飾に、アカンサス葉飾りとして図案化されている。
[神田敬二 2021年10月20日]
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…しかしこの場合,〈萼〉〈花弁〉といっても,これはあくまで文様の構成を解説する形式語であることに注意しなければならない。同様にパルメット形になった扇形モティーフの場合,花弁は葉形とみられるようにもなるし,ついにはそれはアカンサス葉に変容するが,これらの各単位はすべて現実の植物から離れた抽象的モティーフである。つぎに文様の構成は,まず周囲の空間から孤立した単独モティーフの文様があり,つぎに各モティーフを帯状もしくは平面状に連続して配列する。…
※「アカンサス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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