アポトーシス(英語表記)Apoptosis

翻訳|apoptosis

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

一部の細胞があらかじめ遺伝子で決められたメカニズムによって,なかば自殺的に脱落死する現象。アポプトーシスともいう。オタマジャクシカエルになるときに尻尾が消失したり,脊椎動物の指の間の水掻きの発生にともないなくなるなどの現象で,プログラムされた細胞死と呼ばれる。体内での器官形成でもアポトーシスの例が多く発見されており,動物の発生過程での重要な原理とされる。正常な発生過程だけでなく,ウイルスの感染や放射線被曝,薬物投与などでアポトーシスが起きることがわかっており,免疫系の細胞でも重要な役割を果している。

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知恵蔵の解説

プログラムされた細胞死を指す。細胞外より障害を受けて細胞が死ぬのではなく、細胞内部で遺伝子によりあらかじめ決められたプログラムに従ってもたらされる死である。発生の過程や老化などの生物現象に、アポトーシスはなくてはならないものである。また、いろいろな病気、例えばがんの発生、動脈硬化症成立エイズ発症などにも重要な役割を果たす。

(今西二郎 京都府立医科大学大学院教授 / 2007年)

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百科事典マイペディアの解説

細胞が遺伝的な指令に基づいて死ぬこと。アポトーシスを誘導する遺伝子は自殺遺伝子と呼ばれる。形態的には核内のクロマチン凝集したあと細胞全体が萎縮して,断片化して死ぬ。このように遺伝的にプログラムされた細胞死は,個体発生における形態形成や体組織の恒常性維持において重要な働きをしている。
→関連項目キラー細胞

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栄養・生化学辞典の解説

 細胞の死であるが,壊死のように障害による死ではなく,生体の必要に応じた細胞死.染色体の凝集がみられるなど,死に至る過程に壊死とは異なるアポトーシスとしての特徴がある.プログラムされた細胞死とされる.遺伝子に障害が生じた場合など,がん化されることなく,むしろ生体がその細胞を死に至らせる場合などの細胞死も含まれる.

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大辞林 第三版の解説

細胞が自己の持つプログラムにより、計画的に脱落死する現象。オタマジャクシの尾の変態などに見られる。壊死えしとは区別される。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

生物を構成する細胞が自分の役目を終えたり、不要になると、みずから死ぬ(自殺)現象。細胞死ともいう。アポトーシスそのものは古くから知られていた。胎児にみられる手の水かきが体の成長とともに消えていく過程、両生類のの退化などがこれに該当する。アポトーシスは、あらかじめ細胞内の遺伝子にプログラムされているといわれ、癌(がん)、アルツハイマー病やエイズ、一部の神経筋肉疾患などの発症に関与すると報告されている。ある種の癌抑制遺伝子を欠いた細胞は、アポトーシスをおこしにくいことから、一部の癌抑制遺伝子はアポトーシス制御機能をもつと判明し、アポトーシス抑制遺伝子の利用に関する研究も発表されている。線虫を用いた研究でアポトーシスのプログラムが遺伝子に盛り込まれていることを発見したS・ブレンナー、R・ホルビッツ、J・サルストンは2002年、ノーベル医学生理学賞を受賞している。[飯野和美]

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 (apoptosis) 生物を構成する細胞が、自分の役目を終えたり不要になったりするとみずから死ぬ現象。

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化学辞典 第2版の解説

プログラムされた細胞死で,けがや循環障害による壊死(ネクローシス)と区別される.オタマジャクシがカエルになるときにみられる尻尾の消失などが典型例であるが,多細胞生物では不都合な細胞を取り除くために日常的に起こっている.細胞内外からの刺激によって細胞死プログラムが作動すると,カスパーゼ(caspase)とよばれる一群のプロテアーゼが活性化され,それに引き続いてデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)なども活性化されてDNAの断片化や細胞の小片化が起こり,まわりの細胞に影響を与えることなく死滅する.カスパーゼという名前は,活性中心にシステイン(Cys)を有し,アスパラギン酸(Asp)を認識して切断することに由来する.細胞外からの死滅シグナルはFasリガンドから細胞表面のFasに伝えられる.細胞内からの死滅シグナルは,ミトコンドリアからのシトクロムcの遊離が引き金になる.カスパーゼの活性制御因子としてBcl-2のようなインヒビターが知られている.放射線などによってDNAが損傷を受けた場合には,まずp53(転写調節因子)が活性化され,細胞の分裂を止めたうえでアポトーシスが起こる.p53に異常があると不都合な細胞の分裂増殖が止まらず,がん化する.

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