翻訳|amalgam
江戸時代末期の文献(馬場貞由「泰西七金訳説」)には「アマルガマ」という形が見える。これはオランダ語(amalgaam, amalgama)に由来するもの。明治になると英語 amalgam から「アマルガム」が学校の教科書などに現われ、一般化する。
水銀と他の金属との合金。名称は〈やわらかい物質〉という意味のギリシア語malagmaに由来する。水銀は,マンガン,鉄,コバルト,ニッケルなどの少数の金属を除き,多くの金属を溶かして合金をつくる。とくに金,銀,亜鉛,カドミウム,鉛,ナトリウム,カリウムなどとはアマルガムをつくりやすい。多くは水銀中に金属片または金属粉を加えるだけでアマルガムを生ずるが,温めるとさらにできやすい。また水銀を陰極として金属塩水溶液を電解してつくるとよいアマルガムが得られる場合もある(ナトリウムなど)し,水銀塩水溶液に金属(たとえば銅)を浸してつくることもある。
金属の含量によって,水銀と同様な液体あるいはペースト状,固体などとなる。融点の高いものでは水銀との金属間化合物をつくっている場合が多い(たとえばHg2Na 346℃,Hg2K 270℃)。他の合金とくらべると融点が低く,温めると液体となるかあるいはやわらかくなるので,実用上便利なことが多い。たとえば,(1)銀とスズとの合金のアマルガムは歯科用充てん剤として,(2)鉛,スズ,ビスマスのペースト状アマルガムは鏡の反射面に,(3)亜鉛,カドミウムのアマルガムは標準電池に,(4)ナトリウム,亜鉛などのアマルガムは化学での還元剤として用いられる。鉄族元素の金属はアマルガムをつくらないので,水銀容器に用いられる。
執筆者:中原 勝儼
歯科では,19世紀フランスで充てん用に用いられはじめたが,1918年ころになってアメリカで虫歯の充てん用に規格化され,以後今日まで利用されている。かつては銀アマルガムと銅アマルガムが用いられてきたが,現在は銀とスズとの合金の粉を水銀で練り,虫歯で生じた欠損部に充てんして歯の中で固まらせる銀スズアマルガムが多く用いられている。銀スズアマルガムは,硬化時にわずかに膨張するので,欠損部の封鎖性に優れる。アマルガムによる虫歯の修復は,操作が比較的簡単で安価であり,正しく使われれば長期間その性状が変化しないので,永久修復材として広く利用されている。ただし,外から見えやすい前歯部に充てんされると金属色が目だつため,ほとんどが臼歯部の修復に用いられている。
執筆者:砂田 今男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
水銀とほかの金属との合金.水銀と金属を直接接触させたり,水銀を陰極として金属塩溶液を電解すると得られる.水銀と金属との割合により,液状,ペースト状,固体状のものがある.化学的には,アルカリ金属のアマルガムのように金属自体より反応性が弱くなる場合と,亜鉛,アルミニウムのアマルガムのように酸化物皮膜の生成が妨げられて反応が活発になる場合とがある.金,銀の製錬にはアマルガム化が利用され,銀,スズのアマルガムは歯の充填材料,鉛,スズのアマルガムは鏡面の製作に,ナトリウム,亜鉛のアマルガムは還元剤として用いられる.また,水銀を陰極としたアンモニウム塩の液体アンモニア溶液の電解や,アルカリ金属アマルガムやアルカリ土類金属アマルガムにアンモニウム塩濃厚溶液を加えることにより,アンモニウムアマルガムが得られる.海綿状で金属光沢を示す.常温では不安定で,アンモニア,水素,水銀に分解する.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
水銀と他の金属との合金。「柔らかいもの」というギリシア語に由来する。普通は柔らかい糊(のり)状の固体であるが、水銀の分量が多ければ液状となる。タリウム、カドミウム、鉛などの低融点金属は水銀によく溶解するので、一般にアマルガムという場合にはこれらの合金をさす場合が多い。銀スズ合金のアマルガムは歯科用充填(じゅうてん)材として広く用いられているが、近年その使用量は減少傾向にある。鉛、ビスマス、スズのアマルガムは鏡面製造に利用される。なお、アマルガムは加熱すると水銀が揮発放出されて合金元素が残るので、これを利用して金属の製錬(アマルガム製錬)に利用されることがある。「同化する」という英語amalgamateはこれに由来する。
[及川 洪・三島良續]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…歯を治すのに使われる合金。悪くなった部分を取り除いた孔への詰めもの(インレーやアマルガム),歯にかぶせるクラウン,入歯を隣の歯と結ぶクラスプ,入歯の床の材料,あるいは歯の矯正用などとして金属材料が使用されている。人のかむ力は数十kgに達し,繰り返しすりあわさるので,これらの材料は強さが必要であり,入歯の微妙な形が比較的容易にでき,しかも使用中に寸法の変化がなく,口のなかで唾液に長時間接して溶け出したり変質したりせず,人体に害を与えることがあってはならない。…
…古代から知られていた金属で,前1600年ころの墓からも見いだされている。古代から金アマルガムを利用した金めっきはよく知られ,日本でも東大寺の大仏に多量の水銀を使って金めっきをした記録が残っている。水銀化合物をギリシア人は医用の軟膏に,またローマ人は顔料,化粧品に利用した。…
※「アマルガム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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