アミノフェノール(読み)あみのふぇのーる(英語表記)aminophenol

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アミノフェノール」の意味・わかりやすい解説

アミノフェノール
あみのふぇのーる
aminophenol

ベンゼン環アミノ基-NH2と、ヒドロキシ基-OHをもつ化合物o(オルト)、m(メタ)、p(パラ)の3種の異性体があり、いずれも対応するニトロフェノールの還元によって得られる。オキシアニリンともいう。

(1)o-アミノフェノール 昇華性の針状晶。酸化されやすく、空気中で褐色になる。水、エタノールエチルアルコール)に可溶、エーテルに易溶、ベンゼンに難溶。合成染料の中間体となるほか、銀の定性分析、金の定量分析に用いられる。

(2)m-アミノフェノール 柱状晶。熱水、エーテル、エタノールに易溶、ベンゼンに難溶。アゾ染料の中間体。また抗結核剤p-アミノサルチル酸の原料となる。

(3)p-アミノフェノール 無色の板状晶。水、エタノールに可溶、クロロホルム、ベンゼンに不溶。銅(Ⅱ)、鉄(Ⅲ)などの金属イオンや亜硝酸の検出用試薬、金の定量試薬となるほか、写真の現像薬として用いられる。

山本 学]


アミノフェノール(データノート)
あみのふぇのーるでーたのーと

o-アミノフェノール

 分子式  C6H7NO
 分子量  109.13
 融点   177℃
 沸点   (昇華)
 溶解度  1.7g/100ml(水0℃)

m-アミノフェノール

 分子式  C6H7NO
 分子量  109.13
 融点   122℃
 沸点   164℃/11mmHg
 溶解度  2.6g/100ml(水0℃)

p-アミノフェノール

 分子式  C6H7NO
 分子量  109.13
 融点   189.6~190.2℃
 沸点   150℃/3mmHg
 溶解度  1.11g/100ml(水0℃)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「アミノフェノール」の解説

アミノフェノール
アミノフェノール
aminophenol

hydroxyaniline,hydroxybenzeneamine.C6H7NO(109.13).HOC6H4NH2.塩基性のアミノ基と酸性のヒドロキシ基とを同一ベンゼン核にもつので,無機酸と塩をつくる一方,強いアルカリに溶ける.o-,m-,p-アミノフェノールの3種類の異性体がある.【o-アミノフェノール:o-ニトロフェノールを還元してつくられる.昇華性の針状晶.融点174 ℃.空気中で徐々に酸化され,褐色にかわる.エーテル,ベンゼン,エタノールに易溶,水に可溶.λmax 233,285 nm(log ε 3.84,3.51).アゾ染料硫化染料酸性染料の中間物となる.[CAS 95-55-6]【m-アミノフェノール:m-ニトロフェノールの還元,メタニル酸のアルカリ融解またはレソルシノールの部分アンモノリシスによってつくる.結晶.融点123 ℃.エーテル,エタノール,水に可溶.λmax 287 nm(log ε 3.32).空気中で安定である.アゾ染料,酸化染料の中間物,また抗結核剤p-アミノサリチル酸の原料となる.LD50 1660 mg/kg(ラット,経口).[CAS 591-27-5]【p-アミノフェノール:p-ニトロフェノールの還元,またはニトロベンゼンを硫酸およびアルミニウムとともに加熱する方法などでつくられる.結晶.融点186 ℃.水,エタノールに可溶,ベンゼンに不溶.λmax 234,301 nm(log ε 3.89,3.36).酸化クロム(Ⅳ)で酸化するとp-ベンゾキノンとなり,亜硫酸ナトリウムを加えたものはロジナールとよばれ,写真現像薬として用いられる.そのほか,金属の検出用試薬,硫化染料,酸化染料の中間物となる.[CAS 123-30-8]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「アミノフェノール」の意味・わかりやすい解説

アミノフェノール
aminophenol



フェノールのベンゼン核についている水素原子をアミノ基-NH2で置換した化合物。ふつうはアミノ基が一つのものをさし,これにはo-,m-,p-の3異性体が存在する。p-体はフェノールとジアゾニウム塩の反応で生ずるp-フェニルアゾフェノールをハイドロサルファイトNa2S2O4で還元して作る。

アミノフェノールは容易に酸化されてキノンになる。

このため写真の現像液(ロジナール,メトール,アミドールなど)として使われている。また染料の合成原料でもある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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