中央アメリカのカリブ海東部、小アンティル諸島中のリーワード諸島中部に位置する国。主島のアンティグア島と、その北方約50キロメートルにあるバーブーダ島およびレドンダ島からなる。国名のアンティグア・バーブーダは二つのおもな島名のアンティグアとバーブーダを合わせたものである。ちなみにアンティグアの島名はスペインのセビーリャにあるサンタ・マリア・アンティグア教会に由来する。面積442平方キロメートル、人口8万3000(2005年推計)、8万8000(2008年推計)。首都はアンティグア島のセント・ジョンズ。
アンティグア島は火山島で起伏に富み、年降水量は海岸部で1000ミリメートル程度であるが、南西部の高地では1200ミリメートルを超える。地形と降水量の違いによって、火山性の高地からなる南西部と、これに平行する中央平野、および北東から南西に延びる石灰岩の丘陵地の3地区に分けられる。バーブーダ島はサンゴ礁の島で、レドンダ島は無人島である。三つの島はいずれも熱帯気候に属し、気温の年較差は少ない。
アンティグア島は1493年、コロンブスの第二次航海で「発見」され、スペインとフランスが植民地化を試みたが失敗し、1632年イギリス人がセント・キッツ島から入植してサトウキビ栽培を始めた。1666年にフランスに占領されたが、1667年のブレダ条約によってイギリスの植民地となった。1958年に西インド諸島連邦に加盟し、1962年の同連邦の解体後、1967年に属領のバーブーダ島とレドンダ島とともにイギリス連邦の準加盟国となり、国防と外交を宗主国イギリスに依存して内政自治権をもった。イギリスから派遣された高等弁務官のもとで、二院制の議会と内閣によって自治が行われてきた。1970年代後半から、かつての西インド諸島連邦の島が次々と独立に動きだすにつれて、アンティグアも1978年にイギリスとの交渉を開始し、1980年ロンドンの制憲会議で独立が原則的に認められ、1981年11月にイギリス連邦の一員として独立した。同年国連に加盟、憲法を発布した。
議会は二院制で、元首であるイギリス国王の代理を務める総督の指名による17名の議員からなる上院と、選挙によって選ばれた17名の議員からなる下院で構成されている。ともに任期は5年。首相は、下院の多数派代表(通常多数党の党首)が選ばれ、総督に任命されて内閣を組閣する。政党にはアンティグア労働党(ALP=Antigua Labour Party)と統一進歩党(UPP=United Progressive Party)の二大政党がある。
主産物は熱帯果実、野菜、タバコ、砂糖、綿花、水産物である。サトウキビは中央平野と谷底の最良の土地で、綿花は石灰岩の丘陵地で栽培される。近年は観光が経済活動の中心で、2000年代初頭の観光収入は国民総生産(GNP)の60%を占めた。経済発展はアメリカ、カナダ、ヨーロッパからの観光客に依存するところが大きい。世界経済の変動と自然災害による影響を少なくするために、運輸、通信、インターネットギャンブル(オンラインカジノ)と金融サービスの成長を支援している。1941年にアメリカがアンティグア島北東部を軍事基地として借り、この場所はその後、アメリカ空軍の人工衛星の追跡基地となっている。通貨は東カリブ・ドル(ECドル)。
住民の90%以上がアフリカ系で、混血、イギリス系白人が若干いる。公用語は英語。英語と先住民言語の混合語(クレオール語)も使われる。宗教はキリスト教(英国国教会、プロテスタント、カトリック)がほとんどである。
日本とは1982年(昭和57)に国交を樹立。2006年(平成18)に日本との間に技術協力協定を結んだ。貿易では、日本へおもにブドウ(乾燥)などを輸出し、輸出額は約1000万円。日本からはおもに自動車、機械などを輸入し、輸入金額は約8億円である(2010)。
[菅野峰明]
基本情報
正式名称=アンティグア・バーブーダAntigua and Barbuda
面積=442km2
人口(2010)=9万人
首都=セント・ジョンズSt.John's(日本との時差=-13時間)
主要言語=英語
通貨=東カリブ・ドルEast Caribbean Dollar
カリブ海小アンティル諸島のリワード諸島にある,イギリス連邦に属する独立国。アンティグア島,バーブーダ島,レドンダ島(無人)からなり,総面積は種子島にほぼ等しい。住民は黒人とその混血がほとんどであり,この他に少数のイギリス人,アメリカ人,ポルトガル人,シリア人などがいる。宗教は英国国教会が主である。アンティグア島は面積約281km2。サンゴ礁から成る北東部と,中央平野,火山を起源とする起伏に富んだ丘陵からなる南西部に分かれる。熱帯海洋性気候で,綿花,トロピカル・フルーツ,野菜等が栽培される。住民の2/3は北東部に集中しており,最大の都市は首都セント・ジョンズである。またセント・ジョンズ港は水深のある良港で,イギリス本国と結ぶ船便があり,近郊にクーリッジ空港があり,観光業の拡大に大きな役割を果たしている。アンティグア島の北方40kmにあるバーブーダ島(面積151km2)はサンゴ礁の島で,漁業,牧牛等が伝統的に営まれてきたが,近年リゾート開発が進んでいる。このような観光開発の結果,アンティグア・バーブーダの1994年の1人当り国民総生産は6970ドルに達しており,カリブ海地域でも高い水準にある。東カリブ諸国機構に属し,通貨は東カリブ中央銀行の発行する東カリブ・ドル,また司法では東カリブ裁判制度に属している。
アンティグアは1493年コロンブスによって発見され,17世紀前半にイギリス植民地となり,17世紀後半に植民が進んだ。両島は1958年西インド連邦に加盟し,62年の同連邦解体後,67年イギリス自治領となった。独立への歩みは,バーブーダがイギリスの統治下にとどまりたいとしたことから曲折を経たが,その要望は最終的にイギリスにより退けられ,81年11月1日〈アンティグア・バーブーダ〉として独立した。イギリス女王を元首とする立憲君主制をとり,女王の名代として総督がおかれている。二院制の国会があり,首相は議員の中から総督が任命し,閣僚も,首相の助言に基づいて総督が任命する。バーブーダにはアンティグアから分離独立を目ざす動きがある。
執筆者:橋本 芳雄
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