イカリムシ(その他表記)Lernaea cyprinacea

改訂新版 世界大百科事典 「イカリムシ」の意味・わかりやすい解説

イカリムシ (錨虫)
Lernaea cyprinacea

淡水魚類の外部寄生虫の1種。橈脚(じようきやく)亜綱ウオジラミ目イカリムシ科の小型甲殻類。雌の成体体長4~12mmくらい。体は棒状で,体の前部ウナギフナキンギョメダカなどの皮膚や口腔粘膜に深く食いこませ,体前部にある錨状の固着器で宿主の体の組織内に固定する。胴部は宿主の体表に出ている。春から秋にかけての繁殖時期には,体の後部に1対の細長い卵囊が現れ,この中の卵からノープリウス幼生がかえり,メタノープリウス,コペポジット期を経て成体となるが,雄は自由生活幼生期の最後の幼生期であるコペポジットで交尾し,その後で死ぬ。雌はコペポジット期になると宿主を求め,その体内に食い入り,変態を完了し,棒状の胴部を宿主の体外に現し,成長を続ける。イカリムシが多数寄生した魚は著しく弱って,ついには死ぬこともあり,養魚池などに多数発生すると大きな被害を与える。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イカリムシ」の意味・わかりやすい解説

イカリムシ
Lernaea cyprinacea

顎脚綱ウオジラミ目イカリムシ科 Lernaeidaeの淡水産寄生動物。体長 7~9mm。体は棒状で,無色ないし淡黄緑色。ウナギ,コイ,フナ,キンギョ,メダカなどの淡水魚の体表や,口腔に寄生する。自由生活をしていた幼虫が成熟して交尾をすると,雄は死ぬが,雌は宿主である淡水魚にとりつく。雌の体は棒状に変態し,頭胸部に 2対の錨(いかり)状の突起が発達する。この突起を宿主の体内に侵入させ,終生宿主にとりついたままの状態でいる。アジアからヨーロッパにかけて広く分布し,養魚上の大敵。イカリムシ科には海産魚に寄生する種が多く,いずれも形態的に特殊化している。(→顎脚類甲殻類節足動物

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イカリムシ」の意味・わかりやすい解説

イカリムシ
いかりむし / 錨虫
[学] Lernaea cyprinacea

節足動物門甲殻綱ウオジラミ目イカリムシ科に属する水生小動物。ウナギ、コイ、フナ、キンギョなど淡水魚の体表やえら、口腔(こうこう)などに寄生する。ヨーロッパからアジアにかけて広く分布し、近縁種が約50種知られている。体は長さ7~9ミリメートルの棒状で、半透明ないし淡黄緑色を帯びる。雌の頭部が変形して錨(いかり)に似たような2対の突起をもち、それを宿主の体内に挿入して固着し、寄生生活をする。胸部も細長く伸び、終生宿主から離れることはない。卵嚢(らんのう)は紡錘形で、内部に球形の卵が多数収められている。孵化(ふか)したノープリウス幼生は自由生活をしたのちに魚の体表につき、宿主の体液を吸収しながら脱皮、成長する。成熟して交尾すると雄は死んでしまうが、雌は変形して固着生活を続けるという複雑な生活史をもっている。

 外見は甲殻類とは思えない姿であるが、基本的な形はよく残っており、糸状の第1、第2触角のほか、第1から第3顎脚(がっきゃく)や4対の胸肢(きょうし)などが認められる。

[武田正倫]


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百科事典マイペディア 「イカリムシ」の意味・わかりやすい解説

イカリムシ

橈脚(かいあし)類イカリムシ科の甲殻類。ウナギ,コイ,キンギョなどの淡水魚の口腔や鰓(えら)に寄生する。雌は棒状で長さ4〜12mmくらい,ほとんど無色。付属肢は著しく退化し,頸部(けいぶ)までを寄主に挿入している。自由幼生末期に交尾し雄は死亡。雌は寄主を求めて固着,産卵する。養殖魚の大敵で,多数寄生した魚は非常に弱り,死ぬこともある。ユーラシアに広く分布。

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