イヌワシ(その他表記)golden eagle
Aquila chrysaetos

共同通信ニュース用語解説 「イヌワシ」の解説

イヌワシ

翼を広げると、最大2メートルにもなる大型の鳥で、国の天然記念物。国内では北海道から九州の山岳地帯に生息する。環境省のレッドリストで「近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの」に分類されている。森林伐採や単一種の植林、ダム建設などで、餌のノウサギヤマドリが減少したのが要因とされる。繁殖期の初期は人の接近や騒音に敏感で、営巣放棄が起きやすい。

更新日:

出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「イヌワシ」の意味・わかりやすい解説

イヌワシ (犬鷲)
golden eagle
Aquila chrysaetos

鳥類の王者といわれるタカ目タカ科の大型のワシ全長90cm以上,翼の開張は210cmに達する。ユーラシア大陸,北アフリカ,北アメリカの大部分分布し,北方のものは渡りをする。代表的な山地性のワシで,樹木の少ない山岳地帯にすむ。各つがいは,ときには40km2にも及ぶ広い行動圏をもつ。全身暗褐色,後頭部から後頸こうけい)部にかけては黄褐色で,光線のあたりぐあいによっては,金色に光る。英名はこれによる。幼鳥と若鳥は尾の基部が白く,翼にも大きな白斑があり,飛翔(ひしよう)時に目だつ。くちばしは大きく鋭いが,獲物をつかまえるのには,他の猛禽(もうきん)と同様に大きな鋭いつめのはえた足を使う。ウサギ類やキツネなどの中型哺乳類,ヤマドリ,キジライチョウなどの鳥を地上または地上近くでつかまえることが多いが,ヘビ,カメ,魚をとることもあり,死体を見つけて食べることも多い。1年を通じてテリトリーをもち,つがいで守る。巣は樹上または岩棚の上に小枝を積み上げてつくり,毎年補修しながら使い続ける。春に1腹2卵を産む。樹上に休む姿も,飛ぶ姿も均整のとれた美しい形をしており,中世のヨーロッパでは王様だけが鷹狩りに使うことが許されたという。中央アジアでは,オオカミを狩るために使われている。分布は広いが,しだいに減少しつつある。日本でも数は少ない。天然記念物。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イヌワシ」の意味・わかりやすい解説

イヌワシ
Aquila chrysaetos; golden eagle

タカ目タカ科。全長 66~102cm。雌の方が大きく,大きさの異なる 6亜種がある。翼開張は 180~240cmに及ぶ。羽色は頭上から後頸,頸側が黄褐色。そのほかは黒褐色だが,尾羽はやや淡色で,成鳥には黒褐色の帯がある。は先が黒く,基部が黄色。脚も黄色。分布は北極圏を除く北半球の中緯度,高緯度地方と広く,平原から山岳地帯にまで及ぶ。多くは留鳥だが,北アメリカでは北部で繁殖する鳥が中部,南部に渡って越冬する。日本では北海道南部から九州地方までの山岳地帯にすみ,岩崖の棚状部や巨木の横枝上に営巣する。産卵数は 1~3個だが,巣立つのは 1~2羽である。ノウサギ,ライチョウ,キジ類,爬虫類など多様な動物を捕食する。日本での生息数は少なく,近年では多くても 500羽程度と推定されている。1965年国の天然記念物に,1993年には「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)施行に伴い国内希少野生動植物種に指定された。(→ワシ猛禽類

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イヌワシ」の意味・わかりやすい解説

イヌワシ
いぬわし / 狗鷲
golden eagle
[学] Aquila chrysaetos

鳥綱タカ目タカ科の鳥。ユーラシアの大部分、アフリカ北部、アラスカからカナダの大部分、アメリカ西部、メキシコなどで繁殖し、日本には留鳥として生息する。全長約85センチメートル、翼長約60センチメートル。体の上面は黒褐色、頭上から後頸(こうけい)は金色。若鳥は後頸の金色は少なく、翼と尾の基部が白い。本州の中部および北部の山岳地帯で繁殖し、冬も繁殖地周辺にいることが多いが、ときに平地や海岸でも記録される。雌雄2羽で広い範囲を自分の領域とし、なかに採食地や営巣地も含まれる。長くて幅の広い翼を広げ、輪を描いて悠々と飛び、地上に獲物をみつけると急降下してとらえる。獲物はノウサギが多い。険しい断崖(だんがい)や高木の上に枯れ枝を積んで大きな巣をつくり、1~2卵を産む。抱卵日数は約45日、巣立ちまでに70~80日を要する。1965年(昭和40)国の天然記念物に指定された。

[高野伸二]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「イヌワシ」の意味・わかりやすい解説

イヌワシ

ワシタカ科の鳥。翼長60cm前後。雌のほうが大。ユーラシア大陸および北米に分布し,日本では北海道から九州の山岳地帯にすむ留鳥。岩上や大木上に樹枝を集めて大きな巣をつくり,大型の鳥やノウサギなどを捕食。近年,生息数が激減している。天然記念物。絶滅危惧IB類(環境省第4次レッドリスト)。
→関連項目ワシ(鷲)

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のイヌワシの言及

【鷹狩】より

…鷹野,放鷹(ほうよう)ともいう。猛禽類のタカ(オオタカハイタカツミ),ハヤブサ(ハヤブサ,コチョウゲンボウ),ワシ(イヌワシクマタカ)などを馴養して,これらに常食の鳥獣を捕捉させ,それを遣(つか)い手がとりあげる間接的な狩猟法である。猟犬のように獲物を狩人の手元に持ち帰ることはない。…

※「イヌワシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android