改訂新版 世界大百科事典 「イブキトラノオ」の意味・わかりやすい解説
イブキトラノオ
bistort
snakeweed
Polygonum bistorta L.
山地,高山などの日当りのよい草原に生えるタデ科の多年草。エビ状に屈曲した太い地下茎が分岐して団塊状に集まるので,株は叢生(そうせい)する。根出葉は長い葉柄があり,広披針形,長さ8~20cm,茎は直立し30~80cm,上部の葉は茎を抱く。葉鞘(ようしよう)は膜質。花期は7~8月。花は茎の先端に密な穂状につく。花被片は5枚,白ないし淡紅色,長さ3mm。おしべは8本,花柱は3本,雌雄異熟で蜜腺をもつ虫媒花である。堅果は三稜形,長さ3mm。北海道,本州,四国,九州と北半球の温帯と寒帯に分布する。地下茎はタンニンを15~20%含み,漢方薬の拳参(けんさん)として収れん剤にする。ヨーロッパでは民間薬として煎じて口内炎のうがい薬や止瀉(ししや)に用い,栗色の染料とした。また,飢饉のときにはデンプンをとり,葉はホウレンソウの代用にした。和名のトラノオは,その細長い花穂を〈虎の尾〉にみたてたもので,滋賀県伊吹山に多いのでこの名がある。近縁種にハルトラノオP.tenuicaule Bissetet Moore,クリンユキフデP.suffultum Maxim.がある。
執筆者:土屋 和三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報