改訂新版 世界大百科事典 「イワイチョウ」の意味・わかりやすい解説
イワイチョウ
Fauria crista-galli(Menz.)Makino ssp.japonica(Franch.)J.M.Gillett
ひげ根のある太い根茎をもつミツガシワ科の平滑な多年生水草。根茎は枯れた葉鞘(ようしよう)および鱗片葉におおわれ,長い柄のあるやや厚い腎形の葉をつける。葉身は長さ3~10cm,幅4~17cmで,へりに細かい鈍歯があり,先端はゆるく没入し,基部は心形になり,イチョウの葉を連想させるところから和名がついた。水湿地に生育するのでミズイチョウともいう。7~8月に,15~40cmの花茎を出して,多数の白い花をつける。萼は5深裂し裂片は三角状卵形で長さ2.5~5mm,果実をつける時には長くなる。花冠も5裂して裂片のへりに波状のしわが,中央には1本の縦ひだがあって鶏のとさかを思わせる。学名のcrista-galliは鶏のとさかの意味。中部以北から南千島の高山・亜高山帯の湿原,池沼に生育する。母種のアメリカイワイチョウssp.crista-galli(英名deer cabbage)は,アラスカおよび北アメリカ北西部に分布している。山草として植栽されることがある。
執筆者:豊国 秀夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報