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インスタレーション installation

翻訳|installation

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

インスタレーション
installation

展示空間の壁や床に,空間と有機的な関係を持つよう立体作品設置する方法,ないしはその作品を指す。作品のタイトルとして使われる場合もある。元来は,据え付け,取り付け,架設といった味を持った言葉だが,ジャーナリズムなどから特別な意味で使われ出した。ときには天井からのつり下げや空間全体を囲む大規模な展示も行なわれ,また作品は室内だけでなく,建造物の外側や野外に設置されることもあり,周囲の環境条件を考慮するところから,環境芸術との接点も見いだせる。素材は土・鉄・木・水といったものからエレクトロニクスを使用するものまであらゆる場合が想定でき,アッサンブラージュともつながりうる。多くの場合,作品は設置期間を設け,それが終わると解体・撤去される一時的作品である。ジャンルを限定しない表現が可能であるところから,70年代後半ころから盛んになってきた。既製の建造物を取り込む川俣正の大規模な作品は特に知られている。

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知恵蔵の解説

インスタレーション

1970年代から主に欧米で登場した、展示空間全体を使った3次元的表現。絵画彫刻といった「もの」を見せるのではなく、様々な素材を組み合わせて配置・構成した「空間」全体が作品。英語で「据え付け」や「設置」という意味を持ち、日本では仮設(架設)展示、空間構成といった訳語が当てられることもある。60年代のミニマリズム彫刻で知られたロバート・モリスなどが、それまで意識されることの少なかった展示空間を作品との関係の中で取り込んでいった。日本では、70年前後に「もの派」の活動がその先駆的な表現を生み出した。また80年代後半から、アジア、特に東南アジアなどでは、欧米留学から帰った若いアーティストたちが、西洋文化の圧倒的な影響の中で見失われがちだった自分たちの姿を再確認するための手段として、日用品などを使って社会的、政治的主張を伝えるなど、インスタレーションはアジアアートの中心的な表現手法となった。西洋の近代的な美術が前提としてきた、鑑賞者と作品(作者)との明確な境界を揺るがす表現ともいえる。

(山盛英司 朝日新聞記者 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

デジタル大辞泉の解説

インスタレーション(installation)

《取り付け、設置の意》現代美術の手法の一。作品を単体としてではなく、展示する環境と有機的に関連づけることによって構想し、その総体を一つの芸術的空間として呈示すること。また、その空間。

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百科事典マイペディアの解説

インスタレーション

〈ものを据え付ける〉という意味の言葉が美術に転用された用語。1960年代ころから,画廊や美術館といった屋内空間だけでなく野外の空間を変容させる試みとして複数の作品を配置したり,または可変的な配置構造をもつ作品の展示が行われるようになった。
→関連項目アース・ワーク荒川修作インタラクティブ・アートコスースシーガルジャッドDumb Typeタレル長沢英俊ハーケビオラビデオ・アートビュレンヒルブルジョアボルタンスキーホルツァーボロフスキー宮島達男元永定正ロンゴ

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大辞林 第三版の解説

インスタレーション【installation】

〔原義は、取り付け・据え付けの意〕
現代芸術において、従来の彫刻や絵画というジャンルに組み込むことができない作品とその環境を、総体として観客に呈示する芸術的空間のこと。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

インスタレーション
いんすたれーしょん
installation

本来は「設置、架設」を意味するが、美術の領域では、画廊、もしくは屋外の任意の空間に彫刻や立体、あるいはそのほかの事物を据え付けることによって、重層的な「意味空間」を生み出す行為をさすことばとして用いられている。インスタレーションの萌芽として、既製品をほとんど手を加えずに展示した、マルセル・デュシャンのいわゆる「レディーメイド」の諸作品や、クルト・シュビッタースの「メルツバウ」をあげることは可能であろう。また荷造り用の箱のレプリカ(複製)をつくって展覧会場に積み重ね、画廊空間を商品倉庫に変えたポップ・アートのアンディ・ウォーホル、大地や砂漠、湖や山峡などの自然に直接働きかけて作品を生み出す、いわゆるアース・ワーク、さらに幾何学的な抽象を極限にまで推し進め、絵画や彫刻を本質的な要素に還元しようとしたミニマル・アート(とりわけ建築的なスケールを備えた彫刻)などにもインスタレーション的手法がすでにして明らかである。
 1970年代後半から顕著になったこのインスタレーションの手法は、事物とその周囲の環境との相互作用によって、ひとつの作品では生み出しえない、ある「メッセージ性を帯びた」全体をつくりだすことを目ざすものといえようが、その代表者としては、ビデオの映像装置を操るナム・ジュン・パイク、ロシアのアパートの居室や廃校を再現したイリヤ・カバコフIlya Kabakov(1933― )、アリゾナの砂漠地帯にトンネルを掘り続けるジェイムズ・タレルJames Turrell(1943― )、記録写真によって公文書保管庫(アーカイブ)のごとき作品を生み出すクリスチャン・ボルタンスキーChristian Boltanski(1944― )、街なかや橋の下に建築資材や廃材を組み立てて作品を構成する川俣正(1953― )といった作家の名前を逸することはできない。
 匿名の人間のさまざまな記憶と結びついた生の痕跡(こんせき)とよぶべきものを喚起させる、こうしたインスタレーションの手法の大きな特色は、濃密な物語性を秘めた三次元的イメージが一定の空間を満たし、かつ、さまざまなメディア(絵画、彫刻、写真、ビデオ、音響など)を自由に横断するという、その際だった「異種交配」ぶりにある。さらに、任意の空間に任意の事物を据え付けるというインスタレーションの方法は、自らの創作の現場を閉ざされた私的なアトリエから開かれた公共空間に置き換えようとする作者たちの意図を如実に示すものともいえよう。インスタレーションの作者たちの芸術的意思は、まさに設置という「行為」によって初めて実現されるからである。この点で、インスタレーションは本来的な語義である「設置」という行為を不可欠の基礎としており、しかも、不可避的に「撤去」を伴う営為なのである。[村田 宏]

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世界大百科事典内のインスタレーションの言及

【コンピューターアート】より

… 現代,コンピューターを用いて作られたアートは大きく次の三つに分類できるだろう。静止画やアニメーション,SFXを駆使した映像的な作品,空間や装置を使った展示・体験型作品(インスタレーション),そしてインターネット上のアートやCD-ROMのようにデスクトップ上で見ることができるマルチメディア作品である。アプローチ方法によって,ディジタルアート,メディアアート,サイバーアートと呼ばれる場合もある。…

※「インスタレーション」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

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