オーストリア西部,チロル州の州都。人口11万5498(2005)。標高574m,ジルSill川がイン川に注ぐすり鉢状の谷間に位置し,北と南を2000m級の山々に囲まれた文教都市。地名と紋章はイン川にかかる橋にちなむ。南にブレンナー峠,西にアールベルク峠を控え,ヨーロッパを南北と東西に結ぶ十字路の交点にあたり,繊維,製材,食品,鋳鐘などの工業が栄え,地方経済の中心地となっている。カルクアルペン,シュトゥバイアー・アルペンStubaier Alpen,シーファーアルペンSchieferalpen,イン川本支流の渓谷に恵まれ,観光・スポーツのメッカとして知られ,第9回(1964),第12回(1976)の冬季オリンピック開催地となった。後期ゴシック様式の〈御所Fürstenburg〉(1500)に付属する〈金屋根の出窓〉は市の象徴である。ほかにマクシミリアン1世記念碑のある宮廷教会(1553-63),宮城(15世紀,改築は1777完成),州会議事堂(ラントハウス,1725-26),マリア・テレジア通り,州立博物館(フェルディナンデウムFerdinandeum),民芸館,高山植物園などがある。南郊ジル川にかかるヨーロッパ橋は水面から190mの高さにあり,ヨーロッパ第1の高い橋。ローマの植民市に起源をもち,1180年バイエルン系のアンデクス伯が市場町と城を建設(現在の旧市街),1239年都市に昇格した。48年同家の断絶後チロル伯が,次いで1363年オーストリアとの合併でハプスブルク家が都市君主となる。1420年メランに代わり領邦チロルの主都に昇格。1665年チロル系ハプスブルク家の断絶で都城の性格を失ったが,その代償に69年皇帝は同市に大学の設立を認めた。1703年スペイン継承戦争でバイエルン軍の侵入を撃退。ナポレオン戦争期にはバイエルン王国に編入されたが,1814年オーストリアに復帰。第1次世界大戦の結果,南チロルのイタリアへの割譲で後背地を失った。第2次大戦中22回の空襲で大きな被害があり,1945-55年にはフランス軍が進駐した。65年司教座が設置された。
執筆者:木村 豊
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オーストリア西部、チロール州の州都。人口11万3392(2001)。東アルプスを貫流するイン川の右岸にジル川が合流するあたりにつくられた扇状地上にあり、標高574メートル。南のブレンナー峠によりすでに中世から中部ヨーロッパとイタリアを結ぶ南北交通の要地となり、東アルプスの東西交通との交点にあることから、12世紀には都市の基礎がつくられ、インスブルック(「イン川にかかる橋」の意)の名がおこった。北にカルベンデル山脈、南に中央アルプスを望む優れた風景はアルプス都市の名にふさわしく、チロール地方の観光の中心地として内外の観光客を集めている。冬にはウィンタースポーツの基地としてにぎわう。国際会議、見本市の開催地であり、郊外には軽工業(光学、織物、皮革など)が立地する。市内にはアルトシュタット(旧市街)、民芸博物館、州立博物館、ハプスブルク家ゆかりの王宮と教会、マクシミリアン1世の「黄金の小屋根」、町並みを一望できる「市の塔」(15世紀)など、みるべきものが多い。総合大学(1669創立)、アルプスの高山植物や動物を集めたアルペン動物園もある。1964年、76年の2回、冬季オリンピックが開催された。
[前島郁雄]
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…河川の豊富な水量は,チロルをオーストリアにおける重要な水力発電地帯にしている。スキーで有名なザンクト・アントンSankt Antonからチロル州の州都インスブルックに行く途中,車窓から望見できる氷河に輝くエッツタール・アルプスで有名なエッツタールÖtztalは,東アルプス最大の渓谷の一つであり,また古い民俗の宝庫としても知られている。 チロル州の住民の大半を占めるのは6世紀に北方から入ってきたバイエルン族であるが,南からはロマンス語系の人々,北西からはアラマンニ族が入り,その間に古来のケルト系の子孫と思われる人々が残存して,方言,服装,家屋,習俗は渓谷の多彩な景観と対応して,谷ごとに,村ごとに異なるとさえ言われている。…
※「インスブルック」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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