インフルエンザの合併症の一つで、意識障害や全身のけいれん、異常行動を伴う。国立感染症研究所によると、2010年のシーズン以降では年64~101人の発症が報告されている。死亡率は10%程度と高い。脳症患者は9歳以下の子どもが約6割を占める。約25%の子どもで後遺症があり、重症だと脳性まひになる。詳しい発症メカニズムは不明で、有効な治療法はない。
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インフルエンザ脳症は、インフルエンザの感染に伴い急激に発症し、神経細胞など脳に障害をもたらし、時には全身の諸臓器も障害を受ける(
1995年ころから報告があり、2000年ころから一般に知られるようになりました。欧米では少なく、東アジアに多いと考えられています。日本の年間発症数は100~500例で、病因別では最も多い疾患です。好発年齢は1~5歳、ただし、2009~10年に流行した新型インフルエンザでは、5~10歳が中心でした。
インフルエンザの発熱に伴い、数時間から1日以内に、①けいれん、②意味不明な言動、③意識障害などの神経症状が現れます(表1)。その後、次第に意識障害が進行していきます。この時、けいれんが繰り返し起こるタイプもあります。
症状が進行すると、多くの臓器の障害が出てきます。腎障害(血尿)、胃腸障害(ひどい下痢)、肝機能障害、
まず、インフルエンザ感染の診断が重要です。その後、
1.意識障害があること。Japan coma scale(JCS)で20程度
2.頭部CT検査で、びまん
が、確定診断となります。その他、
3.MRI検査や脳波検査など
によってさらに詳しく検査ができます。
また、
4.尿・血液検査など
によって、脳症の重さを推定することも可能です。
2005年、厚生労働省研究班により、「インフルエンザ脳症ガイドライン」ができました。さらに2009年その「改訂版」が出され、全国に広く普及しています。基本的には、このガイドラインに基づいて治療が開始されます。
その概要は、
①まず全身状態を改善すること、とくに酸素投与や、脱水、ショック状態の改善、循環動態の管理などをしっかり行います。
②次に、けいれんを起こしている子が多いので、これをしっかり止めることが大事です。
この①、②の段階で、必要ならば人工呼吸管理をします。
③脳症の治療としては、ⓐ抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザなど)、ⓑステロイドパルス療法(ステロイド大量療法)、ⓒガンマグロブリン大量療法などを行い、必要ならⓓ脳低温療法(34℃前後)、ⓔ脳圧を下げる治療、ⓕ血液浄化療法(交換輸血)などを選択します。
改訂版では、そのほか最新の治療が示されています。
「インフルエンザ脳症の手引き」や「インフルエンザ脳症ガイドライン改訂版」は、厚生労働省や岡山大学小児科のホームページでご覧いただけます。
10年前(2000年ころ)は、約30%の子どもが死亡し、25%に後遺症が残りました。ガイドラインの普及後は、死亡は10%未満(8%)、後遺症は25%と改善しつつあります。神経後遺症を少しでも改善するためには、早期のリハビリテーションの開始が重要です。
森島 恒雄
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
(2015-1-22)
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