インポテンス(読み)いんぽてんすいーでぃーぼっきしょうがい(英語表記)Impotence

家庭医学館 「インポテンス」の解説

いんぽてんすいーでぃーぼっきしょうがい【インポテンス(ED/勃起障害) Impotence】

[どんな病気か]
 インポテンスとは、性交できるだけの勃起ぼっき)がおこらず、満足な性交が行なえない状態で、通常、性交のチャンスがあっても、その75%以上で性交が行なえないものと定義されています(日本性機能学会)。
[原因]
 インポテンスの原因は、機能的障害と器質的障害とに大別されます。
 機能的障害とは、からだのどこにも障害がないもので、心因性インポテンスとも呼ばれており、インポテンスの大部分を占めています。新婚インポテンスに象徴されるように、最近、若い人に増加がみられます。
 器質的障害とは、からだに障害があるもので、陰茎いんけい)そのものの障害のほか神経血管の障害、内分泌(ないぶんぴつ)の病気などがあげられます。
 また、器質的障害と機能的障害を合わせもつ混合型障害もあり、代表的なものは加齢糖尿病によるものです。
[検査と診断]
 器質的障害なのか機能的障害なのかを見分けることが必要ですが、多くの場合、問診をすることで区別できます。
 つまり機能的障害では、性交時には勃起しなくても、自慰じい)などで射精ができたり、いわゆる「朝立ち」が十分に認められることがよくあります。
 しかし、専門医でもわかりにくいケースが少数存在します。そのような場合は、夜間の生理的な勃起を、特殊なマイクロコンピュータ内蔵装置を用いて調べることで診断ができます。正常な成年男性は、夜間の睡眠中に4~6回ぐらい勃起します。こうした生理現象が正常に生じていれば、機能的障害と診断できます。
 この検査で異常なパターンがみられれば、からだになんらかの異常があるものと判断して、その原因を詳しく調べることになります。
[治療]
 機能的障害に対しては、まずカウンセリングによる助言や指導が行なわれます。たいせつなことは、夫婦双方に対して、個々に、あるいは一緒に、時間をかけてカウンセリングを行なうことです。
 心理療法、精神療法のほか、薬物療法や勃起を補助する器具を用いて治療を行なうこともあります。
 器質的障害の場合は、原因別に治療が行なわれます。内分泌系腫瘍(しゅよう)の摘出などで回復することもありますが、一般的には治療は困難だといえます。
 原因を取り除く治療ができない場合、陰圧式(いんあつしき)勃起補助具や陰茎プロステーシスが用いられています。陰茎プロステーシスとは、おもにシリコンなどでつくられた芯棒(しんぼう)を、陰茎海綿体(かいめんたい)内に手術で埋め込むものです。アメリカなどではかなり使われていますが、日本ではあまり普及していません。もちろん保険適応外で、高額な治療法です。

出典 小学館家庭医学館について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「インポテンス」の意味・わかりやすい解説

インポテンス
いんぽてんす
impotence 英語
Impotenz ドイツ語

インポテンツともいい、陰萎(いんい)とか性的不能症とも訳されている。最近では性交不能のみをインポテンスとよび、射精障害や性欲の欠乏のような性機能障害は含めないことが多い。器質的原因による器質性インポテンスと機能的原因(おもに精神的原因)による機能性インポテンス、両者の混在する混合性インポテンスなどがある。

 器質的原因としては、陰茎の先天的な形態異常、尿道下裂、陰茎異物、形成性陰茎硬化などの外陰部の器質的変化をはじめ、脳卒中、脳腫瘍(しゅよう)、多発性硬化症、脊髄(せきずい)損傷、骨盤内手術などの神経系の器質的変化、高齢によるインポテンスの重要な原因である血管系の器質的変化、加齢に伴う男性ホルモンの減少、末端肥大症、クッシング症候群、アジソン病、粘液水腫などの内分泌系の器質的変化、そのほか肝疾患、腎(じん)疾患、慢性前立腺(せん)炎などの器質的変化があげられる。また、機能的原因としては、精神的緊張、不安、恐怖、性知識の不足などのために性行為に失敗すると、また失敗するのではないかという予期不安を生じ、これが次の性行為を失敗させ、ますます不安や緊張が高まり失敗を繰り返すうちに悪循環に陥り、パートナーと向き合うとかならずこのような症状が発現するようになる。また、過度の自慰、性交による勃起(ぼっき)中枢の興奮性低下などの濫淫(らんいん)によるものなどがある。糖尿病のように器質的要因と心理的要因の混在するものや、降圧薬や自律神経薬が原因のこともある。器質性インポテンスでは原因疾患の治療がたいせつで、神経障害のある場合は陰圧式勃起補助具やプロスタグランジンE1の陰茎海綿体注射を試みる。これで効果がない場合はシリコーンプロステーシス陰茎内移植手術が行われる。心理的抑制によるものには行動療法をおもに行うが、正しい性知識を与えたり、抗不安剤などの投与も有効である。また陰圧式勃起補助具やプロスタグランジンE1の陰茎海綿体注射で人工的に勃起させ性交を試み、自信を回復させるのがよい。

[白井將文]

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