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スウェーデンの経済学者。スウェーデン学派の創始者。ストックホルムに生まれ,1876年にウプサラ大学で数学の学位をとるが,社会的正義感の強さから新マルサス主義に傾倒し産児制限等急進的社会政策の唱道者となる。同時に経済学にも興味をもち,ベーム・バウェルクの《資本と利子》を読み本格的に研究を始める。95年に経済学の学位を獲得するが,急進主義思想が災いして,ルンド大学に職を得ることができたのはようやく1900年になってからであった。初期の業績である《価値・資本・地代について》(1893)は,ベーム・バウェルクの資本理論とワルラスの一般均衡理論との統合を試みたもので,新古典派経済学の一つの集大成である。また学位論文(《財政理論研究》1896)で財政理論にも重要な貢献をなしたが,最も独創的な業績は《利子と物価》(1898)で展開された貨幣的不均衡理論である。それは,物価の変動の原因を資本の予想収益率(自然利子率)と銀行の貸出利子率(市場利子率)との乖離(かいり)に見いだしたもので(〈ウィクセル的累積過程〉),その後のヨーロッパにおける貨幣理論と景気変動論に多大の影響力を及ぼすとともに,ケインズ経済学の先駆けともなった。1916年にルンド大学を定年退職後は,学界の指導者として晩年を送った。
→貸付資金説
執筆者:岩井 克人
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スウェーデンの経済学者。ストックホルムに生まれ、ウプサラ大学で数学を学んだが、人口問題や社会問題に関心をもつようになり、経済学に転じた。イギリス、オーストリア、フランス、スイスに留学し、1895年に経済学の学位を取得、1904年にルンド大学教授となった。スウェーデン学派の始祖といわれているが、新マルサス主義の信奉者でもあり、人口増加が経済の破局をもたらすと論じた。その急進的な言動によって入獄したこともある。第一の主著『価値・資本および地代』(1893)では、ローザンヌ学派の一般均衡理論による交換理論やオーストリア学派の資本理論をもとに、分配における限界生産力説を展開した。しかし彼のもっとも顕著な貢献は、第二の主著『利子と物価』(1898)において、自然利子率と貨幣利子率(市場利子率)との乖離(かいり)が投資と貯蓄の不均衡を生み、物価の変動を引き起こして、発達した信用制度のもとでは、その物価の変動が累積的な過程をたどると論じて、動学理論の基礎を築いたことである。それは、現代マクロ経済学の先駆として高く評価されている。晩年の著作『国民経済学講義』全2巻(1913、22)は、前2著を整理したものである。彼はまた、財政学の分野では、財政支出を賄う租税は、その支出がもたらす利益の対価としてとらえるべきだとする利益説の提唱者としても知られている。
[志田 明]
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…その両者の交点において利子率が決まるというのが貸付資金説である。このような考え方に立ってJ.G.K.ウィクセルは,貸付資金の市場で定まる利子率=市場利子率が,貯蓄と投資とを等しくする利子率=自然利子率と必ずしも等しくないということに着目して,有名な〈累積過程の理論(いわゆるウィクセル的累積過程)〉を展開した。自然利子率よりも市場利子率が低いときには,その国民経済は絶えざるインフレーションに陥ってしまうというのである。…
…その門下のJ.M.ケインズによる国民所得を主要な変数とする経済分析にも,マーシャルの概念や均衡分析の手法が多く跡をとどめている。ワルラスの後継者V.パレートは,ワルラスの基数的な効用理論をより一般的な序数的効用理論によっておきかえることに成功し,スウェーデン学派のK.ウィクセルは,ワルラスによって扱われた資本,利子,貨幣の分析を多方面に発展させた。また1940年を前後してJ.R.ヒックス,P.A.サミュエルソンは一般均衡理論の体系に比較静学の方法を導入し,同じころ,W.レオンチエフは産業間の相互依存をデータ分析が可能な形に具体化した産業連関理論(産業連関表)を開拓した。…
…19世紀末から20世紀前半にかけてのスウェーデンの経済学者たちの考え方を一括してスウェーデン学派と呼ぶことが多い。J.G.K.ウィクセル,G.カッセルなどストックホルムを中心として活躍した経済学者たちの流れをくむ人々が多く,ストックホルム学派Stockholm school,あるいは北欧学派と呼ばれることもある。 ウィクセルは,ワルラスの一般均衡理論に対して,ベーム・バウェルクなどのいわゆるオーストリア学派の経済学者の考え方を取り入れて,資本主義経済における経済循環の動学的な分析を展開した。…
※「ウィクセル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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