(1)古代ウイグル語 突厥(とつくつ)語に次いで古い古代チュルク語(チュルク諸語)の一つ。東トルキスタンで活躍したウイグル族の言語。8世紀ないし15世紀の文書・碑文がある。仏教,マニ教,法律に関するものが多い。しかし,最も重要な文献はユヌフ・ハヌ・ハジブが1069-70年に作った《クダドグ・ビリク》と称する教訓詩である。ウイグル文字で書かれたものが多いが,ソグド文字,マニ文字で書かれたものもある。(2)現代ウイグル語 トルキスタンで現代ウイグル語といわれている言語。かつて〈東チュルク語〉などといわれたが,1921年からは公式に〈ウイグル語〉と呼ぶことになった。旧ソ連邦に属した中央アジアのウズベキスタン,カザフスタン,キルギスタン各共和国と中国の新疆ウイグル自治区で話されている。中国に100万以上の話し手がいる。現代チュルク語のなかではウズベク語に近い。新疆のウイグル語文語はチャガタイ文語(チャガタイ語)に近い。ウズベク語同様,チュルク諸語の特徴の一つである母音調和はくずれている。カシュガルのある方言では,動詞語尾は母音調和するが,名詞語尾はそうでない。正書法は,旧ソ連地域のウイグル語はローマ字(ラテン文字)。新疆のウイグル語はアラビア文字。ただし,後者では76年以降中国語表記のローマ字による文献も生まれつつある。
執筆者:柴田 武
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トルコ系諸言語の一つ。古代、中世のウイグル語と区別するために新ウイグル語ともよばれる。現代ウイグル語は、中国の新疆(しんきょう/シンチヤン)ウイグル自治区で約720万人(1990)、カザフスタン共和国などで約24万人(1986)が使用している。トルコ語族のうちウズベク語とともに東方語派を形づくる。新疆ウイグル自治区では、カシュガル、トゥルファンなどの中央方言を土台にした正書法が採用されている。文法構造や語順は、öy(家)、öyniŋ(家の)、öyni(家を)、öyge(家へ)、öyde(家で)、öydin(家から)のように、日本語とよく似ている。長い間アラビア・ペルシア文字を用いて表記されていたが、中国では1930年ラテン化字母が制定され、途中アラビア字の改訂を挟み、76年以後は漢語拼音(ぴんいん)字母による正書法が行われていた。しかし、1982年からアラビア・ペルシア文字の正書法が復活している。カザフスタンではソ連時代の1930~46年にラテン化が進められ、のちキリル字母を採用している。
[竹内和夫]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…はじめモンゴル高原,のちトルキスタン方面に移住したトルコ系民族のひとつ。回紇,維吾爾とも記される。現在は中国の新疆ウイグル自治区と旧ソ連邦中央アジアを主たる居住地とし,人口は中国に約720万(1990),旧ソ連邦内に約21万(1979)。クトゥルク・ビルゲ・キョル・カガン(懐仁可汗)が744年にユチュケン山麓に拠って(在位747年まで)から840年までモンゴル高原に他のトルコ系部族との連合体による遊牧国家を出現させた。…
※「ウイグル語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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