日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ウォード(Lester Frank Ward)
うぉーど
Lester Frank Ward
(1841―1913)
アメリカで最初に体系的な社会学を講じた社会学者。正規の教育を受けず苦学のすえ官吏となり、65歳で初めてブラウン大学教授となる。アメリカ社会学会の初代会長。初めは地質学、古生物学を専攻したが、のちに社会学に転じた。コント、スペンサーに代表されるヨーロッパの進化論的な社会発展説を受け継ぎ、社会の本質に関する理論的究明と現実社会の改革に関する実践的な研究とをあわせた、包括的な総合社会学の体系を打ち立てた。理論的究明の部分は、社会の発生形態の考察を通して社会の本質的性格を明らかにしようとするもので純粋社会学とよばれ、実践的な研究は応用社会学と名づけられて、教育を充実して水準の高い知性を人々に平等に与えることにより、人為的不平等である階級対立を克服することが、社会の改善につながると主張した。社会の進歩における人間の知性と心理的要因の意義を重要視する彼の理論は、後のアメリカの心理学的社会学の基礎となり、また高等教育の普及を促した。主著に『動態社会学』(1883)がある。
[杉 政孝]
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