改訂新版 世界大百科事典 「ウツギ」の意味・わかりやすい解説
ウツギ
Deutzia crenata Sieb.et Zucc.
山野の路傍や伐採あとなどの日当りのよい所にふつうに見られるユキノシタ科の落葉低木で,観賞用として庭木や生垣に使われることもある。枝が中空なので,空木(うつぎ)という。またウノハナともいうが,それは空木花の略とも,卯月(旧暦4月)に花が咲くからともいわれる。幹の高さは約2mで,よく枝分れする。葉には柄があって対生し,葉身は卵形または広披針形で,ふちにはにぶい鋸歯がある。葉の表裏ともに小さな星状毛がたくさんあり,ざらついている。5~6月,枝の先に多数の白い花を総状または集散花序につける。5枚の花弁からなる花冠は鐘状の形をし,直径約1cm,萼筒と5枚の萼裂片には星状毛が密生する。おしべは10本,花弁よりやや短く,花糸の両側には翼があって,葯のすぐ下で歯状になっている。花柱は3~4本あり,蒴果(さくか)になってもそのまま残る。子房は下位。北海道から九州にかけて広く分布している。観賞用として栽培され,八重咲きや紅色をおびる花などの品種も分化している。材はやや堅く,ねばりがあり,木釘などをつくる。
ウツギと同じ種に属するコウツギvar.pubescens (Koidz.)Kitam.は,ウツギよりも花は小さく,円錐花序に多数の花をつけ,紀伊半島,四国の石灰岩地帯に多い。近縁種には,ウラジロウツギ,ヒメウツギ,マルバウツギ,ウメウツギなどがあり,いずれも栽植されることがある。
ウツギの仲間とは系統的に異なった植物にも,ウツギという名がつく植物は意外に多い。バイカウツギは同じユキノシタ科の別属のものであり,ハコネウツギ,ドクウツギ,ミツバウツギ,コゴメウツギ,フジウツギなどは,別の科に属し,系統的には関係のない植物である。しかし外形的には,すべて落葉の低木で,茎の中心の髄が発達し,ウツギと同じように空木状になり,類似している。
執筆者:若林 三千男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報