ウランおよびトリウムが放射崩壊して鉛の同位体になる性質を利用して岩石の年代を決定する方法。数千万~数億年以前の年代測定に有効。238U,235U,232ThはRaなどの放射性元素を経てHeを放出しながら,それぞれ206Pb,207Pb,208Pbに崩壊する。崩壊定数はそれぞれλ238=1.55×10⁻10/年,λ235=9.85×10⁻10/年,λ232=4.95×10⁻10/年である。岩石中の238Uと岩石中で238Uから生じた鉛206Pb*の量と岩石の年代tの間には206Pb*=238U(eλ238t-1)の関係があるので,206Pb*と238Uの量がわかれば年代を計算できる。235U,232Thにも同様な式が成り立つので,U,Thの崩壊では三つの時計が動いていることになる。岩石形成時に取り込まれる鉛同位体組成が正しく推定され,岩石形成後にU,PbそしてUの崩壊系列中の放射性物質の出入りがなかったならば,三つの年代は一致する。この条件が成立する時,データは206Pb*/238Uと207Pb*/235Uを軸とする平面上で(206Pb*/238U)/(207Pb*/235U)=(eλ238t-1)/(eλ235t-1)で定まるコンコーディア曲線上を動く。図で岩石形成直後,原点にあった点が20億年後にはA点に至る。この時岩石が変成を受けると,岩石中の鉱物はさまざまな割合で鉛を失い,データを表す点は線分AO上に並ぶ。さらに10億年たつと点はBC上に並ぶ。これから岩石形成と変成の年代がわかる。
地球が作られた時のU/Pb比と鉛同位元素組成がわかれば,地球の平均的な鉛同位元素組成を年代の関数として計算できる。一方,方鉛鉱などの鉛鉱物はUを取り込まないので,鉱物中の鉛同位元素組成は鉱物形成時のまま保持される。したがって方鉛鉱が地球の平均的U/Pb比をもつ物質から分化したのなら形成年代を決定することができる。このようにして求めた年代を特に鉛-鉛年代という。
同時に作られて同じ鉛同位元素組成をもつ岩石であってもU/Pb比が異なれば,時間とともに鉛同位元素組成は異なってくる。しかし206Pb/204Pbと207Pb/204Pbを軸とする平面上では,これらの岩石を示す点は常に一直線上にある。この直線の傾きから年代が求められる。種々の隕石を示す点は45億年を示す直線上に並び,地球の平均的鉛同位体組成を示すと考えられる海底泥土中の鉛を示す点もこの直線に乗った。隕石も地球も原始太陽系内で同時にできたとみられるので,地球の年齢も45億年と結論された。
執筆者:斎藤 和男
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放射性元素の放射壊変を利用した絶対年代測定法の一つ。一般に放射性元素の親元素は、一定の割合で崩壊し娘(じょう)元素を生じる。したがって、親元素と娘元素の量比を測定することによって、その年代を知ることができる。ウラン‐鉛法の場合、ウラン(U)238から鉛(Pb)206の変化を利用する方法と、ウラン235から鉛207の変化を利用する方法とがある。前者の場合の半減期(最初にあった原子核数がちょうど半分に減るのに要する時間)は約45億年であり、後者の場合は約7億年であるから、古い地質時代の測定に適している。
[岩松 暉・村田明広]
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