アルプス山脈の向こう側(イギリス,ドイツ,フランスから見て)の意味。17~19世紀の教会史,それぞれの国の政治・文化情勢のなかで,カトリック教会の教義と教会運営についてローマ中心主義,教皇の首位権を強く主張して,それを実践しようとする立場を指す。近代国民国家の成立とそれに結びついた地域主義,自由主義,世俗主義などの台頭に対して,カトリック知識人が示した教会の統一と権威を求める傾向の表現であった。すなわちガリカニスム,ジャンセニスム,フェブロニアニズム(ホントハイムJ.N.von Hontheimがフェブロニウスの名で表明した立場で,教皇は教会会議に従属すべきだとする),ヨーゼフ2世の宗教政策などの各国教会の独自性を主張する動きと対立するもので,とくに第1バチカン公会議では教皇の不可謬性に関する定義が発布されるように強く働きかける運動をした。広い意味では,ベルギー,ドイツなど一部キリスト教政党の傾向についても使われた。なお,ウルトラモンタニズムは,2~5世紀のモンタヌスの異端に従ったモンタニズムとは無関係である。
執筆者:高柳 俊一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
国家に対する教会の独立を擁護し、ひいては公共生活の諸領域で教皇と教会の影響力の伸長を目ざした近代カトリックの運動。中部ヨーロッパからみて「山のかなた」ultra montesにあるローマ(教皇)の利害を代弁するところから、この名が由来する。起源は、革命直後のフランスでカトリック教会をも国家の一制度にしようとしたナポレオン1世の企図に反対したシャトーブリアン、ド・メーストルらの思想にある。この傾向はベルギー、ドイツなどの諸国にも波及し、社会的領域のみならず、文芸や思想をも含めたカトリック信仰の興隆をもたらしたが、プロテスタンティズムや近代的自由主義の側からは、信仰の自由を侵すものとして批判された。教会内での司教への分権的傾向に対し、教皇の支配的地位を確立した第1回バチカン公会議(1870)は、その顕著な成果の一つといえる。
[田丸徳善]
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