エウドクソス
えうどくそす
Eudoxos
(前408ころ―前355ころ)
ギリシアの数学者、天文学者。小アジア南西岸のクニドスの出身で、プラトンの友人とも門人ともいわれる。数学では比例論を広げて、通約できない量(無理量)にまで適用できるように組織し直したが、この業績はユークリッドの『ストイケイア』Stoikheia第5巻にまとめられている。また「取り尽くし法」という今日でいう区分積分法に相当する方法を発見、この方法は17世紀まで平面や立体の求積に使用された。黄金分割の理論も発展させた。
天文学では、プラトンらの、天体は完全な球でその運行は円だとする説を前提に、同心天球説を唱えた。この説は、太陽、月、惑星の不規則な運動を、地球を中心にした27個の天球の回転運動の結合によって解明しようとしたもので、惑星の順行、留(りゅう)、逆行が不十分であるが、説明できた。アリストテレスもこの説を支持して、さらにその仕組みを複雑にした。同心天球説は科学的宇宙像を基礎づけたが、それはあくまでも幾何学的な仮説にすぎず、その後ヘレニズム時代には廃れた。
[平田 寛]
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エウドクソス【Eudoxos】
前400ころ‐前347ころ
古代ギリシアの数学者,天文学者。アルキメデスに次ぐ独創性の持主で,地理学者,哲学者,立法家としても活躍。クニドスの人。アルキュタスに幾何学を学び,アテナイでプラトンと交わり,エジプトで暦法を学んだといわれる。数学者としては,通約できない量にも適用できる一般的な比例論を完成し,その成果はユークリッド(エウクレイデス)《ストイケイア》第5巻にまとめられている。また,求積問題では,〈取尽しの方法method of exhaustion〉と近世になって名付けられた証明法を考案して,角錐(円錐)の体積は同底同高の角柱(円柱)の体積の3分の1であることを初めて厳密に証明した。
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「エウドクソス」の意味・わかりやすい解説
エウドクソス
ギリシアの数学者,天文学者。クニドスの生れ。ピタゴラス派のアルキュタスやプラトンに学び,エジプトで天文学を研究。立方体倍積問題から無理量を扱い,取尽しの方法により錐体,球の体積を求めた。天動説の立場から26個の同心天球で惑星の運動を説明,1太陽年を365日6時間と見積もった。
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世界大百科事典内のエウドクソスの言及
【アラトス】より
…再びマケドニアに帰り,同地で死去。《現象》は,エウドクソスによる散文体の天文学書を叙事詩体に書き改めたもので,ゼウスへの呼びかけに始まる天体の運行を扱う部分(1~732行)と気象学(733~1154行)から成り,ホメロスの言語を使用している。専門的知識に誤りが多いにもかかわらず,古代末期に至るまでギリシア,ローマ人の間で好評を博し,キケロなどによってラテン語に訳された。…
【コスモス】より
…天界を神的な存在としたプラトンは,天界にふさわしい唯一の運動は一様な円運動であり,惑星の順行,逆行,留等のみかけの不規則性をこの一様円運動の原則から逸脱せずにいかに説明するかという問題を提起した。エウドクソスとカリッポスが考案した幾何学的な同心天球説はこの問題提起に対する一つのみごとな解答であった。その後アリストテレスは同心天球説に依拠しながら,階層構造的に秩序づけられたコスモスとしての宇宙論を完成させた。…
【天文学】より
…〈天動説〉はギリシア天文学を代表するものである。プラトンの門弟エウドクソス(前4世紀)は初めて数理的天文学を組織しようとした。主として日月および惑星の見かけの運動を説明するために,それぞれに対し3~4個の回転球を組み合わせ,その最内側の球に天体が固定していると考えた。…
※「エウドクソス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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