ロシア連邦、シベリア中央部を北流し、カラ海のエニセイ湾に注ぐ大河。東サヤン山脈から流下する大エニセイと、モンゴル国のダルハト盆地に発する小エニセイとがキジルで合流してエニセイ川本流となる。全長4092キロメートル(大エニセイから)、流域面積259万平方キロメートル。合流点からミヌシンスク盆地までは西サヤン山脈を横断し、ボリショイ・ポローグ(大急流の意)とよばれる急流や滝が続く深い渓谷であったが、ここにサヤノ・シューシェンスコエ・ダムが建設された。また東サヤン山脈の低所を横切る所にあるジブノゴルスクに1971年クラスノヤルスク・ダムが建設され、その逆流が360キロメートル上流のミヌシンスク付近に達している。クラスノヤルスク付近からは、早瀬を所々に伴いながら、エニセイ台地の東縁に沿って西シベリア低地を北流する。アンガラ川、ポドカメンナヤ・ツングースカ川、ニジニャヤ(下)・ツングースカ川の三大支流をいずれも右岸からあわせ、氾濫原(はんらんげん)の幅20~40キロメートル、年平均流量は毎秒約2万立方メートルに達する大河となる。
ウスチポルトより下流が河口部で、巨大なデルタ(三角州)をつくって分流し、エニセイ湾に注ぐ。河口における年平均流量は毎秒1万9800立方メートルである。全川にわたり雪解けの4月下旬から6月にかけて高水期となり、ついで7月から9月にかけて流量が安定し、11月に低水期がある。上流山地部で11月末から4月末まで、中流ではクラスノヤルスクで11月中旬から5月上旬まで、下流では10月下旬から7月初めまでの間結氷する。春の雪解けは大量の流水を伴い、年間流量623立方キロメートルがカラ海に注ぎ、約1000万トンの懸濁物質が運搬される。
エニセイ川は本流のほぼ全域約3000キロメートルが航行可能で、中央シベリア地方のもっとも重要な交通路となっている。ことに下流地方では航空路以外のほとんど唯一の交通路で、主要な貨物輸送がクラスノヤルスクから河口に近いドゥジンカの間で行われている。沿岸では木材、石炭、石墨、鉄、非鉄金属、金などを産し、それらの輸送に河水が利用されるほか、シベリア開発の資材輸送も増加している。とりわけ木材の流送が全輸送量の半分以上を占めている。主要港は上流からアバカン、クラスノヤルスク、ストレルカ、マクラコボ、エニセイスク、トルハンスク、イガルカ、ドゥジンカなどである。漁獲はサケ、ニシン、マス、チョウザメの類がある。
[津沢正晴]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
ロシア連邦,シベリア中西部の大河。名称はエベンキ語でヨアネシ(〈大きな川〉の意)に由来する。最上流部は東サヤン山脈に源をもつ大エニセイ,モンゴル西部の山地に発する小エニセイからなり,両川はトゥーバ盆地キジル市で合流,これより下流をエニセイ川と称する。小エニセイを含めた全長4102km,本流は3487km,総流域面積約258万km2。セレンガ川源流までを含めると全長約5075kmとなる。本流は上流部で西サヤン山脈を横断して270kmもの峡谷と連続した早瀬をつくる。シベリア鉄道との交点クラスノヤルスクからは西シベリア低地と中央シベリア高地の境界をつくりながら北に流れ,アンガラ川を右岸に合わせてからは川幅2km,深さ10~17mの大河となる。最下流部ではウスチ・ポルトを過ぎると四つの主要流路に分かれて流れる。年間流量は約624km3に達し,ロシアの河川中第1位。上流部ではサヤン,クラスノヤルスクなどの巨大な水力発電所も建設されている。交通路としての役割も大きく,右岸の支流ニジニャヤ・ツングースカ,ポドカメンナヤ・ツングースカ,ベルフニャヤ・ツングースカは,17世紀以来,ロシア人の東方進出の主要ルートとして利用されたことで知られる。現在もミヌシンスク上流のオズナチョンヌイ以下の本流全域が可航で,海航船はエニセイの入江から440km上流のイガルカまで遡航する。最も密な航路をもつのは中流のクラスノヤルスク周辺であるが,12月中旬~5月上旬は結氷し航行に支障を来す。
執筆者:渡辺 一夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新