オウム真理教事件(読み)オウムしんりきょうじけん

百科事典マイペディア 「オウム真理教事件」の意味・わかりやすい解説

オウム真理教事件【オウムしんりきょうじけん】

麻原彰晃(本名,松本智津夫)を教祖とするオウム真理教(2000年〈アレフ〉,2003年〈アーレフ〉に改称)が組織的におこしたとされる一連の事件。1995年3月20日東京で11人の死者と約5500人の重軽症者をだす地下鉄サリン事件が発生,同22日教団強制捜査が開始された。地下鉄サリン事件公証役場の仮谷清志事務長拉致事件(1995年)の強制捜査を予知した教団がその攪乱をねらっておこしたもの。麻原は同年5月16日逮捕された。1989年の坂本堤弁護士一家失踪事件,1994年の松本サリン事件をはじめ,VXガス殺人事件,教団内リンチ殺人事件,警察庁長官襲撃事件や数々の拉致監禁事件にも教団の関与が問題となった。オウム真理教は麻原を最終解脱者とみなし,その超能力や秘儀を看板にヨガ道場として発足,1989年に宗教法人の認可をうけ,各地に道場を建設したが,土地取得や異臭をめぐり地元住民と対立・抗争する一方,出家信者の家族の間には被害者の会が結成された。1990年には衆議院選挙に集団立候補したが,全員落選し,社会を敵視する傾向に拍車がかかった。オウムは現世を否定する出家集団を核とし,インテリ青年を含む数千人の信者をひきつけたが,自己演出的な終末観や殺人の宗教的正当化など,社会常識を大きく逸脱した諸観念を生み出し,それが一連の非合法的・犯罪的行為につながったと考えられる。1995年12月同教団には宗教法人解散命令がくだった。破壊活動防止法適用も検討されたが,1997年に見送られた。1999年,同教団対策のための団体規制法と被害者救済のための破産特別法が国会可決,成立した。また,一連の公判で起訴された被告189人のうち,2004年2月までに麻原を含む12人が一審で死刑判決(麻原は2006年9月に死刑確定)。
→関連項目小田晋外傷後ストレス障害公安調査庁佐木隆三神経ガス組織犯罪チオペンタール破壊活動防止法マインド・コントロール村山富市内閣

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知恵蔵 「オウム真理教事件」の解説

オウム真理教事件

救済のためならば殺人をも正当化するゆがんだ教義と、敵対者を許さない独善的な体質の下、教祖である松本智津夫(麻原彰晃)被告の指示で、主なものだけでも以下のような数々の凶悪事件が引き起こされた。▼坂本弁護士一家殺害事件=信徒の家族らの相談を受けて教団の被害者対策にあたっていた坂本堤弁護士とその妻子を殺害(1989年11月4日)したうえ、3人の遺体を新潟、富山、長野の山中に埋めた。事件が起きる直前の89年10月に、TBSが教団を批判する坂本弁護士のインタビューテープを教団幹部に見せたうえ、教団の抗議を受けて放送を見送っていたことが判明し、社長が辞任するなどした。▼松本サリン事件=長野地裁松本支部の裁判官官舎を狙って猛毒のサリンを散布し、巻き添えで近くの住民7人が死亡、約140人が重軽傷を負った(94年6月27日)。当初、第一通報者である会社員の関与が疑われ、行き過ぎた捜査・報道が問題になった。教団の犯行と判明した後、マスコミ各社と警察はこの会社員に謝罪した。▼地下鉄サリン事件=首都中心部を大混乱に陥れるため、ラッシュアワー時の東京の営団地下鉄3路線5列車でサリンを散布、通勤客や地下鉄職員ら12人が死亡、約3800人が重軽傷を負った(95年3月20日)。直前に信徒の親族の監禁致死事件を起こしており、その捜査が教団に及ぶのを免れるのが目的だったという。2カ月前に起きた阪神・淡路大震災と合わせ、日本の安全神話は大きく揺らいだ。地下鉄サリン事件後の強制捜査で、教団の主要幹部は軒並み逮捕・起訴されたが、99年頃から布教やパソコン販売などの活動が再び活発になり、各地で住民とのトラブルが相次いだ。こうした事態を受けて、同年秋の臨時国会で、事実上、教団を対象にした団体活動規制法が成立。(1)公安審査委員会の決定により、公安調査官や警察官は教団の施設に立ち入り、構成員などについて報告を求めることができる(観察処分)、(2)危険な動きや調査妨害があれば、勧誘行為や施設の使用・取得を禁止できる(再発防止処分)、が主な内容で、同法に基づき、公安審は2000年1月、オウム真理教(アーレフと改称)を3年間の観察処分にし、06年1月2度目の観察処分を更新する決定をした。04年2月、東京地裁は松本被告に求刑通り死刑を言い渡した。控訴審の東京高裁10部は06年3月、一審死刑判決を不服とした弁護側の控訴を棄却し、裁判の手続きを打ち切る決定をした。同高裁刑事11部は06年5月、この決定を支持、弁護側はこれを不服として6月、最高裁に特別抗告した。弁護団は7月、「松本被告は訴訟能力が失われている可能性が高い」として、専門的治療が必要とする精神科医の意見書を最高裁に出した。最高裁は9月15日に特別抗告を棄却、松本被告の死刑が確定した。

(緒方健二 朝日新聞記者 / 2007年)

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