村山富市内閣(読み)むらやまとみいちないかく

百科事典マイペディア 「村山富市内閣」の意味・わかりやすい解説

村山富市内閣【むらやまとみいちないかく】

1994年6月30日〜1996年1月11日。羽田孜(つとむ)内閣総辞職後,自由民主党日本社会党新党さきがけの3党が連立を組み,社会党委員長村山富市が首班となって組閣副総理,外相に自民党総裁河野洋平)。1994年7月村山首相はクリントン米大統領との電話会談で〈日米安全保障条約〉の堅持表明するとともに国会で〈自衛隊合憲〉と発言。8月〈侵略戦争〉否定発言の桜井新環境庁長官が辞任。9月連立与党は1997年4月から消費税率を5%に引き上げることを決定。12月〈被爆者援護法〉が成立。1995年1月17日,兵庫県南部地震発生。2月政府は地方分権推進法を閣議決定,5月15日成立。3月20日地下鉄サリン事件発生(オウム真理教事件)。6月6日衆議院本会議で〈戦後50年〉の国会決議採択新進党は欠席)。同月12日新進党が内閣不信任案を提出するが,否決。7月〈女性のためのアジア平和国民基金〉発足。同月の参議院選挙で新進党が議席を倍増。8月15日村山首相は閣議決定にもとづいて〈戦後50年〉の首相談話を発表し,太平洋戦争と植民地支配に対して反省と謝罪を表明(村山談話と通称)。同日閣僚9名が靖国神社に参拝。9月沖縄で米海兵隊員の女子小学生暴行事件が発生,この事件を契機に沖縄県民の怒りが爆発し,基地の整理・縮小日米地位協定の見直しを求める声が拡大。大田昌秀沖縄県知事が米軍用地使用更新の手続きを拒否,11月村山首相が署名代行を決定。10月村山首相が国会で〈日韓併合条約は法的に有効に締結された〉と答弁,韓国から抗議をうけ釈明。11月日本の植民地統治を評価する発言を行い韓国などから批判をうけた江藤隆美総務庁長官が辞任。12月政府は水俣病の最終解決策を決定。1996年1月村山首相が突如退陣を表明,内閣総辞職。→日中戦争沖縄基地問題
→関連項目55年体制武村正義橋本龍太郎橋本龍太郎内閣防衛計画大綱村山談話連立政権

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「村山富市内閣」の意味・わかりやすい解説

村山富市内閣
むらやまとみいちないかく

(1994.6.30~1996.1.11 平成6~8)
自由民主党、日本社会党、新党さきがけの3党が推す社会党委員長の村山富市を首班として発足した連立政権。社会党の首相は2人目で、1947年(昭和22)の片山哲以来。「人にやさしい政治」を掲げたが、指導力の欠如と、自民、社会の連立への疑問などから、内閣支持率は終始、低迷を続けた。ただ、社会党出身で懸念された自衛隊、安保政策では、1994年(平成6)7月の臨時国会で、村山首相は自衛隊違憲から合憲への政策転換を表明、日米安保堅持も明確にした。原爆被爆者援護法の成立、水俣病問題の解決など戦後処理や弱者救済に力を入れ、社会党カラーを見せた。

 しかし、1995年1月に起きた阪神・淡路(あわじ)大震災では初動態勢の遅れから、政府の危機管理が問われた。また同年3月の地下鉄サリン事件では、オウム真理教関連事件に対する破壊活動防止法の団体規制適用で慎重姿勢を取り続けた。同年7月の参議院選挙で、社会党は16議席と大敗した。与党は改選総数の過半数を辛うじて確保したため、8月8日に改造内閣を発足させた。

 しかし、9月に沖縄県で米兵による小学生女児暴行事件が発生したことで、県知事の米軍用地強制使用手続きの代理署名拒否に発展、最終的に首相自ら署名するにいたったが、指導力の不足混乱を招いた。さらに、住宅金融専門会社の不良債権処理策で、財政資金投入により損失を穴埋めする方針を決めたものの、世論の批判の高まりのなかで、1996年1月、予算案審議を前に突然、総辞職した。

[水野雅之]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

山川 日本史小辞典 改訂新版 「村山富市内閣」の解説

村山富市内閣
むらやまとみいちないかく

社会党の村山富市を首班とする社会・自民・新党さきがけの3党連立内閣(1994.6.30~96.1.11)。与党第1党の自民党河野洋平総裁を副総理・外相,新党さきがけ代表武村正義を蔵相にすえ,自民党色が濃い。「人にやさしい政治」を掲げたが,日米安保条約や自衛隊合憲など自民党との妥協や,景気対策・日米経済協議・沖縄基地など内外の難問が山積するなかで96年(平成8)1月退陣。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

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