改訂新版 世界大百科事典 「オナガ」の意味・わかりやすい解説
オナガ (尾長)
azure-winged magpie
Cyanopica cyana
スズメ目カラス科の鳥。名のように尾が長く,スマートな体型で,カラスの仲間とはとても思えない華やかな羽色をしている。この鳥は,またその分布域が2地域に遠く離れている点からも興味深い。すなわち,分布域の一つはイベリア半島で,他の一つはバイカル湖地方,中国東部,朝鮮半島,日本である。日本国内においても,現在本州中部以北に局地的に分布し,例えば関東平野の一部の地域ではごくふつうの鳥であるが,近隣の地域でもこの種が分布していないところが多い。また,九州や近畿地方には,数十年前には分布していたが,現在は生息していない。全長約40cm。頭上と顔は光沢のある黒色で,背,腰,雨覆いは淡い褐色ないし水色を帯びた灰色,初列風切は黒く,翼の他の部分と尾羽は際だった灰青色である。胸腹部は汚白色。主として平地の疎林や公園,住宅地などの樹木の多い環境にすむ。標高数百mの地域にも生息しているが,こういう地域では山地の森林には生息せず,高原状の地域や山間の平野部の疎林にすんでいる。多くのカラス科の鳥のようにさえずりはせず,クィークィクィクィとかギャーギャーというしわがれた声で鳴く。雑食性で,昆虫,クモ,ミミズ,各種の果実など季節にあわせてさまざまなものを食べる。一年中,群れになって生活し,繁殖期にも数つがいが近くに集まって営巣することが多い。巣は樹上に小枝などを集めてつくり,5~6月に1腹5~8個の卵を産む。
執筆者:安部 直哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報