改訂新版 世界大百科事典 「カウティリヤ」の意味・わかりやすい解説
カウティリヤ
Kauṭilya
前4世紀後半~前3世紀初めのインドの政治家,政治理論家。生没年不詳。チャーナキヤCāṇakya,ビシュヌグプタViṣṇuguptaとも呼ばれる。バラモン身分の出身。伝説によると,ナンダ朝の王から受けた屈辱に報復するため,青年チャンドラグプタを助けてこの王朝を倒したという。新王朝(マウリヤ朝)成立後には,宰相として王チャンドラグプタを補佐し,インド最初の統一帝国の建設に尽力した。政治家としてのカウティリヤは,権謀術数を巧みに用いたことで知られる。彼の著作と伝えられる政治論書《アルタシャーストラ(実利論)》は,目的(領土の獲得と維持)のためには手段を選ばぬマキアベリ的な政治哲学に立って書かれている。しかし現存の書物は後3世紀ごろに編まれたものらしい。ビシャーカダッタViśākhadattaの名作戯曲《ムドラーラークシャサMudrā-rākṣasa》(4~5世紀)は,マウリヤ朝成立時におけるカウティリヤの謀略をテーマとした作品である。
執筆者:山崎 元一
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