翻訳|cowboy
牧童のこと。とくにアメリカ西部の牧畜農場で馬に乗って牛の世話をする男たちを指す。1820年代,テキサスではもうカウボーイの活躍が見られたが,彼らの黄金時代は67年にはじまる。カンザス州アビリーンまで鉄道がのびた時,家畜商人のジョーゼフ・マッコイJoseph G.McCoy(1837-1915)はここに牛を集め,東部へ運ぶことを思いつき,当時テキサスでは1頭4ドルだった牛を40ドルで買うと宣伝した。たちまちカウボーイたちは,テキサスから〈チザム・トレール〉沿いに,1000マイル(約1600km)もの距離をものともせず,年間50万頭の牛をここまで追ってきた。鉄道が西へのびるに従い,ほかのトレール(牛追い道)も開発され,ロング・ドライブ(遠い牛追い)に従事するカウボーイは時代の花形となった。ただし80年代の末になると,農場や牧場に有刺鉄線の柵が設けられて牛の通行を妨げ,加えて南部に鉄道が発達してきたため,牛追いは急速に過去のものとなった。
カウボーイには,牛を育て,焼印を押し,盗人や野獣から守り,市場まで届けるなど,さまざまな仕事があった。彼らは乗馬にすぐれ,投縄やピストルの技をみがき,恐れを知らぬ働き手だった。しかし生活はきびしく,事故や肺炎で死ぬ者が多く,平均して一人7年ほど働けるだけだった。彼らは一般に日雇い労働者で,渡り者も多く,粗野,不潔,しばしば不道徳で,農民たちには嫌われていた。しかし,ロング・ドライブの時代が終わるころから,カウボーイは伝説化され,ロマンティックに美化されだした。野性にみちた自由な生き方,純朴な正義心,インディアンや無法者や強欲な資本家から開拓者を守るガンさばき,しかも孤独をかかえた人間性。それがバラッドやトール・テール(ほら話)やパルプ雑誌で語られ,ついに西部劇映画でアメリカの騎士道物語にまで昇華されることになった。今日もカウボーイはもちろん存在し,アメリカの牧畜業の支えになってはいるが,かつての華やかさはない。
→ガウチョ
執筆者:亀井 俊介
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アメリカ西部やカナダ、メキシコなどの牧場で働く牧夫のこと。カウは雌牛の意。もともとは、アメリカ独立戦争のときイギリスにくみした王党派のゲリラ隊の名称であった。16世紀なかば、アメリカのテキサスに初めて牛が家畜として登場し、のちに各地に広まった。これを飼育したり輸送したりする者をカウパンチャーcowpuncherまたはパンチャーpuncher(家畜の番人)とよんだが、のちカウボーイというようになり、19世紀に最盛期を迎えた。乗馬や投げ縄の得意な荒くれ男が多く、民謡や物語をはじめ、西部劇映画には欠かせない登場人物として、革のベストやテンガロン・ハットまたはカウボーイ・ハットとよばれるつば広の帽子など、独特の風俗で親しまれる。カウボーイのはくジーンズは実用的ではき心地がよいところから、現在若者や子供たちの日常着として世界的に流行している。なお南米草原地方のカウボーイは、ヨーロッパ人と原住民との混血が多く、ガウチョgauchoとよばれている。
[佐藤農人]
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