翻訳|catapult
古代の投石器,弩(ど)の名称から出た言葉で,航空機の射出装置をいう。第1次世界大戦のころ,航空機を軍艦に積んで使用するために考案されたものであり,第2次大戦では,戦艦,巡洋艦などに広く装備され,偵察,弾着観測用水上機(重量4~5t)の射出に使われた。艦載機の大型化,高性能化が進むにつれて,航空母艦においても,カタパルトの必要性が高まったが,戦後ジェット機(重量20~40t)の出現により,もはや自力発艦は困難になり,急速にカタパルトの装備が普及し,アングルドデッキの採用とともに,効率の良い発着艦が可能となった。
第2次大戦当時の水上機用カタパルトは,圧縮空気,火薬などの力でピストンを動かし,増速滑車と鋼索を使って滑走台車を高速で牽引し,航空機を射出する型式のものが一般的であった。空母に装備されるカタパルトはスチームカタパルトと呼ばれ,飛行甲板下に埋め込まれた長大なシリンダーの中を高速で走行するピストンの運動エネルギーを,シャトル(ピストンと一体になって動く金物)から直接に,あるいはブライドル(牽引索)を介して航空機に伝達して射出するものである。動力となる蒸気は艦の推進用主ボイラーから供給される。原子力空母エンタープライズに装備されているC-13型スチームカタパルトは,全長100m近くもあり,重量約40tの航空機を時速160ノットで射出する能力をもつといわれている。
執筆者:本多 一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
火薬、蒸気力、スプリングなどを利用して、狭い場所から航空機を発進させる装置。古代ヨーロッパで使われた武器で、石や槍(やり)を射出する弩(いしゆみ)がその起源。1920年ごろから航空機の離陸促進の方法として実用化され、第二次世界大戦前には艦船からの航空機発進に使われるようになった。第二次大戦までの主流は、航空機を台に乗せて、それを火薬や圧縮空気の力により高速で動かし、その力を借りて航空機を射出するという方式であった。しかし、艦載機のジェット化や大型化が進むと、それでは推進力・距離ともに足りず、蒸気を使うものが考案された。これがスチーム・カタパルトとよばれるもので、今日の通常型航空母艦の標準カタパルトになっている。スチーム・カタパルトは蒸気の力で高速移動するピストンを使い、シャトルを介して航空機とつけ、100メートル弱の距離を走って航空機を放出する。アメリカ海軍の航空母艦で使われているC13‐1カタパルトでは、重量35トンの艦載機を、最終的に時速256キロメートルまで加速して離陸を可能にしている。
[青木謙知]
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