カツオドリ(その他表記)booby
gannet

共同通信ニュース用語解説 「カツオドリ」の解説

カツオドリ

全長70センチ前後で、孤島や岩礁の崖や草地で集団繁殖する海鳥。種としてはウに近く、海上を飛びながら小魚やイカなどの獲物を探し、急降下して飛び込んで捕食する。枯れ草などで作った皿状の巣に1、2個の卵を産み、雌雄が交代で卵を抱く。ふ化した幼鳥は約3カ月で巣立つ。熱帯から亜熱帯海域に広く分布し、国内では伊豆諸島小笠原諸島などで繁殖が確認されている。

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改訂新版 世界大百科事典 「カツオドリ」の意味・わかりやすい解説

カツオドリ (鰹鳥)
booby
gannet

ペリカン目カツオドリ科Sulidaeの鳥の総称,またはそのうちの1種を指す。海の表層にいる魚類空中から飛び込んでとらえる大型(全長60~85cm)の海鳥。体は細長い紡錘形で,翼は細く長い。尾もくさび形で長い。くちばしはがんじょうで,脚は短く,あしゆびにはよく発達した水かきがある。海上ではやや速いはばたきで飛び,ときどきグライダーのように滑翔(かつしよう)する。この間,下を向いて魚群をさがし,魚を発見するやいったん停飛し,ねらいをつけて翼をたたみながら急降下し,水中に突っ込んで魚をとらえる。少しなら魚を追って水中を泳ぐこともでき,また,トビウオを空中で飛びながらとらえることができる種もある。魚群を集団で採餌するものもある。カツオなどの魚群によくつくことからこの名があるが,外洋漁業者はオオミズナギドリなどを含んでカツオドリと呼ぶことも多い。世界で1属9種が知られる。温帯海域にすむ3種は全体に白く,頭部は濃い黄色でシロカツオドリと呼ばれる。このうち北大西洋温帯域にシロカツオドリSula bassanaが繁殖している。他の2種は,アフリカ沿岸のケープカツオドリS.capensisとオーストラリア,タスマニアニュージーランドのオーストラリアカツオドリS.serratorである。

 島の断崖の棚や上部の平たん地に密集し大集団をつくって営巣する。海草を踏み固めて巣をつくり,1卵を産み,それを水かきでつつみつかむようにして抱卵する。熱帯海域には6種が分布し,これらの種は一般に翼上面が褐色である。顔や脚の裸出部は種によって鮮やかな黄色,赤色,青色をしている。島の地上に海草や草を踏み固めて巣をつくる種は1腹1~2卵を産むが,灌木や樹上に巣をつくる2種はただ1卵産むのみである。

 日本には,世界に広く分布し,全長約75cmのカツオドリS.leucogasterが伊豆諸島南部,小笠原諸島,南西諸島で,全長約85cmのアオツラカツオドリS.dactylatraが尖閣諸島で繁殖している。また,南西諸島南部には樹上営巣性で全長約70cmのアカアシカツオドリS.sulaが少数繁殖する。インド洋のクリスマス島には原生林で繁殖する特殊なモモグロカツオドリS.abottiがいる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カツオドリ」の意味・わかりやすい解説

カツオドリ
かつおどり / 鰹鳥

広義には鳥綱ペリカン目カツオドリ科に属する海鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。同科Sulidaeの仲間は全長65~95センチメートル、海上をやや速く羽ばたき、ときどきグライダーのように飛ぶことも交えながら前進する。この間、下方を向いて魚の群れを探す。みつけると、いったん停飛してねらいを定め、体側に翼を引きまとめながら海に突入する。こうして海表層の魚類をとらえる。この採餌(さいじ)法にあうように、円錐(えんすい)形の頑丈な嘴(くちばし)がある。体は葉巻たばこのような形をしていて、尾はくさび形で長く、翼も細く長い。足は短く水かきがあり、水中をいくらか泳ぐこともできる。飛翔(ひしょう)力も優れ、空中でトビウオをとらえることもできる。世界に9種すんでいて、二つのグループに分けられる。温帯域(北大西洋、南部アフリカ沿岸、タスマニア島、ニュージーランド)に繁殖する3種は全体に白く、シロカツオドリ(英語ではgannet)とよばれる。島に密集して営巣し、1卵を産み、それを水かきで包むようにして抱卵する。熱帯海域には6種が分布する。翼の上面は褐色で、顔や脚部の裸出部は鮮やかな黄、赤、青と種によって特徴的な色をしている。これらは英語ではboobyとよばれシロカツオドリと区別されるが、やはり島に密集して繁殖する。4種は地上に営巣し、1~2卵を産むが、2種は樹上に営巣し、ただ1卵を産む。日本では伊豆諸島南部、小笠原(おがさわら)諸島、南西諸島で種としてのカツオドリSula leucogasterが繁殖し、アオツラカツオドリS. dactylatraが尖閣(せんかく)諸島で、また、樹上営巣性のアカアシカツオドリS. sulaが南西諸島南部で繁殖している。

[長谷川博]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カツオドリ」の意味・わかりやすい解説

カツオドリ
Sula leucogaster; brown booby

カツオドリ目カツオドリ科。全長 64~75cm。頭から頸部,背,尾は黒褐色,腹部は白色。眼からのつけ根までの顔の前面は皮膚が裸出し,雄は嘴の基部まで青緑色で先は黄色だが,雌は皮膚の裸出部位から嘴の先まで黄色である。嘴は太くて長く,縁が鋸状になる。生息域は亜熱帯から熱帯の沿岸,外洋にまで及ぶ。獲物のイカや魚類は空中から海中に飛び込み,水中で追いかけてとる。島嶼の岩の上や草地などで集団繁殖し,草や枯れ枝を積んで 2卵を産む。日本では南方海域に生息し,伊豆七島小笠原諸島硫黄列島,鹿児島県の草垣群島沖縄諸島などに集団繁殖地がある。北海道から九州にかけての沿岸海域にはほとんど見られない。なお,カツオドリ科 Sulidaeは全長 60~85cm,10種に分類され,いずれも沿岸から外洋の海域に分布する。日本には 3種が分布している。

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百科事典マイペディア 「カツオドリ」の意味・わかりやすい解説

カツオドリ

カツオドリ科の鳥。翼長40cm。体色は暗褐色で腹面は白い。世界の熱帯,亜熱帯の海域に広く分布。日本では伊豆七島,九州南端,小笠原諸島などで繁殖する。海洋上を飛びまわり,急降下して魚をとる。地上に枯枝や海藻などで巣を作り1卵を産む。他にアオツラカツオドリ,アカアシカツオドリ等の種類が小笠原以南に分布する。アカアシカツオドリは絶滅危惧IB類(環境省第4次レッドリスト)。

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