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カブトガニ カブトガニTachypleus tridentatus

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

カブトガニ
Tachypleus tridentatus

節口綱カブトガニ目カブトガニ科 Limulidae。古生代末の化石種から現生種まで基本形の変化がほとんどなく,「生きている化石」の代表である。雌の全長 70cm,雄は 50cm。半円形の頭胸部と五角形に近い腹部および細長い尾剣からなり,それぞれの接合部で体を折り曲げることができる。頭胸部の前縁は雌ではほぼ完全な円形であるのに対し,雄では側方寄りに大きなくぼみがある。また腹部の各側縁に雌では 3本,雄では 6本の可動棘がある。このような雌雄の外形上の違いは,雄が雌の背後方に重なるようにつかまるという習性に適応して発達したものである。頭胸部の腹面には鋏をもった 6対の付属肢がある。第1対は採餌用,ほかは歩行用であるが,最後の 1対の末端近くにへら状器と呼ぶ 4枚の板があり,泥土上を歩くのに役立つ。腹部には 6対の幅広い付属肢があり,第2~6対の裏面には 150~200枚の葉状の呼吸器(肺書と呼ばれる)がある。冬の間はやや深いところで生活し,5月頃から浅海に移動する。産卵期は 7月上旬から 8月下旬。10~15cmの深さの穴を掘り,約 500個の卵を産み落とし,さらに 20~30cm前進して再び卵を産む。これを 5~8回繰り返す。卵は 50~60日後に三葉虫型(→三葉虫類)の幼虫として孵化する。その後脱皮を繰り返し,十数年後に成体になるといわれる。瀬戸内海から九州北部,台湾,中国沿岸に分布し,岡山県笠岡市の笠岡湾内神島水道一帯(→神島)は本種の繁殖地として国の天然記念物に指定されている。なお,カブトガニ科は本種のほかに,アジア大陸の東・東南部にミナミカブトガニ T.gigas とマルオカブトガニ T.rotundicauda が,北アメリカ東岸にアメリカカブトガニ Limulus polyphemus が知られているのみであるが,化石は古生代シルル紀までさかのぼることができる。(→カブトガニ類節足動物腿口類

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

カブトガニ

2億年前からほとんど姿を変えていない節足動物。おわんのような殻をかぶった体にとげのようなしっぽを持つ。体長はオス50センチ、メス60センチ程度。世界的には東南アジアや中国、アメリカ東海岸に生息。国内では現在、曽根干潟や伊万里湾のほか、瀬戸内海の山口県沿岸、福岡市の今津湾大分県杵築市の守江湾などで確認されており、瀬戸内が分布の北限とされる。繁殖には産卵のための砂地と、幼生が育つための干潟が必要だが、干拓や埋め立て、護岸工事などで生息地が減少。環境省レッドデータブックで「絶滅の危機にひんしている」絶滅危惧(きぐ)I類に指定されている。岡山県笠岡市愛媛県西条市佐賀県伊万里市では、繁殖地がそれぞれ国、県、市の天然記念物になっている。

(2008-08-22 朝日新聞 朝刊 生活1)

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百科事典マイペディアの解説

カブトガニ

ドンガメ,ウンキュウなどとも。剣尾類カブトガニ科の節足動物。雌は全長60cm,雄はやや小さい。頭胸部背面は大きな甲でおおわれ,尾は長い剣状。クモに近縁で,第1齢の幼生は三葉虫によく似ている。
→関連項目カブトエビ

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

カブトガニ
かぶとがに / 兜蟹・
horseshoe crabking crab
[学]Tachypleus tridentatus

節足動物門節口(せっこう)綱剣尾(けんび)目カブトガニ科に属する海産動物。瀬戸内海、九州北岸、台湾、東シナ海沿岸、また東南アジア海域に広く分布する。1928年(昭和3)に岡山県笠岡(かさおか)市の生江浜(おえはま)が繁殖地として国の天然記念物に指定されたが、干拓事業で埋め立てられたため、現在では近くの神島水道も追加指定をして保護している。
 カブトガニ類(剣尾類)は、中生代ジュラ紀以降ほとんど形を変えずに今日に至っており、「生きている化石」といわれる。系統的にはクモ形類に近い。現生種はカブトガニのほかに、東南アジアから、ミナミカブトガニT. gigasとマルオカブトガニT. rotundicaudaの2種、北アメリカ南東岸から属の異なるアメリカカブトガニLimulus polyphemusが1種、計4種が知られ、いずれも形態的によく似ており、総称的にカブトガニとよばれる。4種のなかでは、アメリカカブトガニに古い形質がもっともよく残されている。[武田正倫・山崎柄根]

形態

カブトガニは、背面からみると、ほぼ半円形の前体と五角形に近い後体、それに続く細長い尾剣からなる。前体はしばしば頭胸部に、また後体は腹部と同義によばれるが、正確には、前体には腹部の一部が含まれているために同義に扱えない。前体はヘルメット状に盛り上がり、左右側方にそれぞれ1個の大きな側眼(複眼)があり、また前端近くには1対の小さな正中眼(単眼)がある。後体の側縁には可動の棘(とげ)が6本ある。前体の腹面には7対の付属脚(きゃく)があり、7対目のものを除き、いずれも先端がはさみになっている。これらの付属肢のうち、最初の1対は摂食用、続く2対目から6対目までは歩行用であるが、基部は食物そしゃく器となっている。6対目の脚(あし)の末端近くにへら状器とよばれる4枚の板があり、泥土上を歩くのに役だつ。7対目の付属肢は腹部の脚で1節のみからなるが、下唇(かしん)の役割をもっている。後体の付属肢は6対あり、いずれも団扇(うちわ)状。第1対目は蓋板(がいばん)とよばれ、後面に生殖門がある。2~6対の裏面にはそれぞれ150~200枚のセロファンを重ねたような鰓書(さいしょ)とよばれる呼吸器官がある。成体の雌は全長60~70センチメートルであるが、雄はやや小さい。雌雄の形態的違いとして、前体の前縁が雌では完縁であるが、雄では前側方にくぼみがあること、後体側縁の棘が雄では6対とも長いのに対し、雌では後3対が短いこと、前体の歩行肢の前2対が雄では先端が鉤(かぎ)づめの把握器となっていることがあげられるが、これらの特徴は、雄が雌の背後方に重なるようにして交尾する習性への適応である。[武田正倫・山崎柄根]

生態

成体は、秋冬の間はやや深みの泥底におり、海底にすむ二枚貝やゴカイ類などを食べて生活している。5月下旬ごろ浅海に移動してきて、7月中旬から8月下旬の大潮の前後に産卵する。入り江の奥の砂泥地に、雌が15センチメートルくらいの深さに穴を掘って500個ほどの卵を産み、雄が後方から精子をかけ、砂で卵を埋める。場所を変えて数回産卵して海へ戻るが、卵は50~60日で、尾剣が後体からわずかに突出する程度の三葉虫型幼生で孵化(ふか)する。幼生はその場で越冬し、翌春に脱皮して小さな尾剣をもった2齢幼生となる。その年内にもう一度、次の年に二度、以後毎年1回ずつ脱皮して十数年で成体になると考えられる。
 かつては肥料にされるほど多く生息していたが、近年埋立てや環境汚染のため、生息地の環境が悪化しており、絶滅の危機にある。
 なお、北アメリカ産や日本産のカブトガニの血球内顆粒(かりゅう)抽出液は、菌体内毒素(エンドトキシン)に接するとゲル化するので、検出法の一つとして使われている。[武田正倫・山崎柄根]
『関口晃一編『カブトガニの生物学』(1984・サイエンスハウス) ▽笠岡市教育委員会編『カブトガニの研究報告書』1~3(1980~83・カブトガニ保護センター)』

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