狭義にはノルウェーから北海を通り,スコットランドの大部分,イングランド北西部,ウェールズ,アイルランドを含み,北東~南西方向にのびる造山帯をカレドニア造山帯と呼び,ここにおこったシルル紀後期~デボン紀前期の変動をカレドニア造山運動と呼んだ。広義には古生代前半(カンブリア紀~デボン紀)の世界のすべての地域の造山運動をいう。カレドニアはスコットランドのラテン名である。カレドニア造山帯の花コウ岩,変成岩の年代は3.2億~5.6億年前の範囲を示す。花コウ岩類は,古期の混成型花コウ岩(5億~5.6億年前)と新期の貫入型で露出面積の広い花コウ岩(3.9億~4.1億年前)に分けられる。後者はデボン紀初期をピークとするマグマ活動である。ノルウェー一帯のカレドニア造山帯は西に傾斜する低角度の衝上断層でバルト楯状地の上に重なっている。中国大陸ではシルル紀最後期~デボン紀最前期の海成層が欠如しており,花コウ岩,変成岩の絶対年代(3.8億~5億年前)からもカレドニア造山運動に相当する地殻変動の存在が確かめられた。日本列島の古生層(オルドビス紀かシルル紀以降)の基盤には,黒瀬川構造帯などの4億年前の年代を示す変成岩,花コウ岩があるが,これらは先カンブリア時代のものと推定されている。
執筆者:佐藤 信次
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