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ガス突出 ガスとっしゅつgas outburst

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ガス突出
ガスとっしゅつ
gas outburst

炭鉱の坑内作業場において,一時に多量のガスが,粉炭または岩石などを伴って猛烈な勢いで噴出すること。地震のような震動と爆発のような音を発し,強い圧風を伴うことがある。ごく短時間で止まる場合が多いが,引続いて噴出を続けることもある。ガスの成分は主としてメタンであるが,炭酸ガスのこともある。原因については明確な定説はないが,炭層の奥部に高圧ガス吸蔵した部分があって,その部分に自由面が近づき,盤圧の変動により圧力の平衡が破れたとき発生するものと考えられる。特定の地域の特定炭層に発生しやすい傾向があるが,一般に断層,褶曲その他の擾乱地帯で深部になるほど発生しやすい。日本の炭鉱における深部開発では,ガス突出対策が最大の難問である。

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デジタル大辞泉の解説

ガス‐とっしゅつ【ガス突出】

炭坑で、坑道掘進中などに突然、大量のメタンガスなどが炭塵(たんじん)を伴って噴出する現象。窒息するなど大災害をもたらす。

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百科事典マイペディアの解説

ガス突出【ガスとっしゅつ】

炭鉱の坑内で炭層内や上・下岩盤などから突発的に多量のガスが吹き出す現象。炭層中に高圧吸蔵されたガスが発破(はっぱ)やその他の衝撃による圧力低下で一挙に噴出するもので,粉塵を伴うこともあり,作業員の窒息や埋没を生じ,またガス爆発の誘因ともなる。

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世界大百科事典 第2版の解説

ガスとっしゅつ【ガス突出 gas outburst】

多量のガスが炭壁または岩盤を押し破って炭坑内に一時に強烈に噴き出す現象をいう。ガス突出が起こると,避難のいとまもなく,濃厚なガスのため,またはガスに伴って放出される多量の粉炭などに埋没して窒息したり,突風による機械的衝撃で死傷するものも生ずる。また突出したガスは,風下に流れたり風上に逆流し,もし火源があれば爆発を起こすこともある。突出するガスは,日本ではほとんどメタンガスであるが,南フランスの炭田では二酸化炭素の大突出が起きている。

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大辞林 第三版の解説

ガスとっしゅつ【ガス突出】

炭坑内で、大量のメタン-ガスなどが突然、強烈に噴出する現象。しばしば大量の炭塵を伴う。避難の暇なく、大惨事をもたらす。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ガス突出
がすとっしゅつ
instantaneous coal and gas outburst

地下の採掘場および坑道掘進現場などで、突然粉炭が高圧ガスとともに噴き出してくる現象。このため当該現場に働いていた人々が粉炭に埋没したり、噴き出したガスのため窒息して死傷する鉱山災害である。1981年(昭和56)10月に北海道夕張市にあった旧北炭夕張新炭鉱での100人近い死亡者を出したガス突出は日本炭鉱史上最大のものであった。噴出した粉炭は約4000トン、メタンガス量は60万立方メートルであったといわれている。
 ガス突出は日本でも明治以来報告されているものだけで百数十件発生しており、死亡者総数で320人以上に達し、炭鉱でもっとも恐れられている事故の一つである。そのうえ、採掘深度が大きくなれば、発生の頻度、規模とも増加する傾向にあり、深部災害といわれている。
 日本でおこったガス突出は、少数の例外を除けば、炭鉱でメタンガスが粉炭を伴って噴出するものである。諸外国ではメタンガスばかりでなく二酸化炭素の突出、メタンと二酸化炭素の混合突出も数多く報告されている。それらの国はフランス、ポーランド、旧チェコスロバキア、ハンガリーおよび旧ソ連であり、全世界での発生総数は数千回以上と推察される。とくに二酸化炭素の場合は激しく、しかも大きな突出になるため、各国とも深部採掘にあたって対策に悩まされている。さらに二酸化炭素の突出は、炭鉱ばかりではなく、岩塩やカリウムの鉱山にも多く、これらの鉱山はむしろ炭鉱以上に注意と対策に苦心している。
 ガス突出の発生原因および予知については、まだ十分に解明されておらず、東西ヨーロッパ諸国、中国、ロシア連邦ならびに日本でも熱心に研究されていて、20~30年以前には、フランス、ドイツ、ハンガリーおよび旧ソ連などで数年置きに原因と機構の究明、予知および防止対策のための国際シンポジウムが開かれていた。
 予知法としては、突出予想区域の岩盤や炭層の微小破壊音の特性をとらえてみたり、炭層のガスの脱着速度(炭層から採取した一定量の石炭にガスをいったん吸収させたのち放散させ、一定時間内での一定量の石炭からのガスの放出速度を計る)を測定して炭層の突出の危険性を評価するぐらいが実用化されている方法である。
 一方、防止対策は、炭層内に多数の孔(あな)をうがち、その孔に吸引圧をかけ、炭層内に包蔵されている高圧のガスを抜く方法、炭層に大口径孔をうがって炭層を破砕させ、内部に作用している盤圧すなわち応力を除去する方法、および発破(はっぱ)をかけて炭層に刺激を与え、人工突出をおこさせて不意突出による危険防止を図るなどが実技上の対策となっている。
 ガス突出には通常前兆があり、有能で長い経験のある坑内労働者は、いち早く察知して退避する。しかし、なかにはまったく前兆を伴わないものもあり、人的災害を生じている。炭鉱保安学の研究はガス突出の予知と防止に集中しているといっても過言でないほど多くの研究者が努力しているが、未解決の難問の一つとなっている。[磯部俊郎]
『山田穣著『鉱山保安ハンドブック』(1958・朝倉書店)』

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世界大百科事典内のガス突出の言及

【鉱山災害】より

…表2に示した石炭鉱山の災害率は10年前の2割に減少しており,同様に減少している金属,石灰石の災害率に近づいている。さらに,表3に示すように,石炭鉱山の災害原因を見ると,頻発災害といわれる取扱い中の器材・鉱物,落盤・側壁の崩壊,運搬関係が大きなウェートを占め,一時に多数の死傷者を生じる大きな災害になりやすいガス・炭塵爆発,ガス突出,山はね,自然発火などの災害を起こしていないのが,災害減少の大きな要因である。分類上では,ガス・炭塵爆発(ガス爆発粉塵爆発),ガス突出山はね自然発火,火災,水害,風害,雪害,震災,または火薬類の紛失・盗難,その他の火薬類についての事故,死者1人以上を生じた災害,同時に休業見込み4週間以上の負傷者を含む罹災者3人以上を生じた災害,同時に罹災者5人以上を生じた災害を重要災害といい,重要災害のうち同時に死亡者3人以上または罹災者5人以上を生じた災害を重大災害という。…

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