出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ドイツ宗教改革者ルターのもっとも優れた内容の小品。1520年に出版され、彼の宗教思想をもっとも簡潔明瞭(めいりょう)に説いている。冒頭に、二つの対立する命題、すなわち「キリスト者はすべての者の上にたつ自由な君主であり、だれにも従属しない」と、「キリスト者はすべての者に奉仕する下僕であり、だれにも従属する」がともにたてられ、自由と奉仕の矛盾が内的な信仰による自由と、そこから生じる外的な愛による奉仕とに分けて論じられ、キリスト者は信仰と愛のうちに生きてこそ自由を実現しうることが強調されている。
こうした信仰による宗教的自由の姿が明確に説かれた著作である。
[金子晴勇]
『石原謙訳『キリスト者の自由』(岩波文庫)』
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
ルターの三大著作の一つ(1520年)。原典は最初ドイツ語,ついでラテン語で書かれ,義認論にもとづく信者生活の模範を示している。ラテン語版は教皇レオ10世に献呈された。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…彼の福音主義は,さらに広く市民層から農民層にまで及ぶ国民的な世論を獲得するにいたるが,そこには当時急速に発展しつつあった印刷術の力が大きく働いており,ルター自身この手段を存分に活用して,多くの著述や論争文,説教を公にした。とりわけ歴史的に重要な意味をもつのは,20年の夏から秋にかけて次々に書かれたいわゆる三大改革論,《キリスト教界の改善について,ドイツ国民のキリスト教貴族に与う》《教会のバビロン捕囚》《キリスト者の自由》である。 《ドイツ国民のキリスト教貴族に与う》は,ルターが初めてドイツ人としての国民意識に立って,ローマ教皇勢力によるあくどい財政的収奪や,聖職売買,そのほか国民生活を圧迫し正しい信仰をそこなうさまざまな悪弊を列挙し,教会当局者が無能を暴露している現在,統治権力を神にゆだねられた貴族(実際には領邦君主たるドイツ諸侯)に,教会生活全般の改革をたすけるよう呼びかけたものである。…
…18年にはアウクスブルクで枢機卿カエタヌスによる教会審問を受け,自説の取消しを拒否,19年にはエックとライプチヒで討論(ライプチヒ討論)して,教皇も公会議も無謬ではありえないと主張した。そのころからみずからの信仰と神学を,学者のためにはラテン語で,民衆のためにはドイツ語で著作して公にしはじめ,20年にはそれは一つの山を迎えて《キリスト者の自由》をはじめとする多くの著作が出版される。20年末には破門脅迫教勅を焼却して,21年初めには遂に破門とされる。…
※「キリスト者の自由」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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