日本大百科全書(ニッポニカ) 「ぎんなん」の意味・わかりやすい解説
ぎんなん
ぎんなん / 銀杏
イチョウの種子をいう。イチョウは雌雄異株で、10月中旬から下旬に雌木に果実が熟す。熟果は直径2センチメートル内外、黄褐色の柔らかい外種皮(がいしゅひ)は悪臭をもつ。この中に通常2稜(りょう)のある堅い白色の中(ちゅう)種皮(鬼皮(おにがわ))をもった種子があり、堅果として市場に出ているぎんなんはこれである。中種皮の内側に褐色の被膜状の内種皮(薄皮(うすかわ))があり、この中に食用となる青緑色の胚乳(はいにゅう)をもつ胚がある。外種皮にはビロボールやギンゴール酸を含み、これに直接触れるとかぶれることがある。これらの物質は幹や葉にも含まれ、防虫作用をもつといわれ、乾葉はトウガラシやタバコの葉とともにシミ(衣服や本につく昆虫)などの防虫に用いられた。胚乳にはタンパク質4.7%、微量のエルゴステリンやレシチンを含む脂質1.7%、炭水化物34.7%前後を含む。
独特の風味と色は日本料理にふさわしく、鬼皮をとって塩ゆでし、薄皮をとって茶碗(ちゃわん)蒸しや寄せ鍋(なべ)にする。鬼皮をつけたまま焼き、はぜた鬼皮を熱いうちにむいたものは酒のつまみによい。薬用として咳(せき)止め、下痢止め、通経、利尿によいという。多食すると急性中毒をおこすことがある。
[飯塚宗夫]