フランスの文芸批評家。はじめパリのビブリオテーク・ナシヨナルに勤めたが,筆禍事件を起こして1891年辞職。以後は前年に創設に参加した《メルキュール・ド・フランス》誌を主要舞台として文筆に専念。若い頃,狼瘡で醜い顔の持主となったのを恥じて,ほとんど外出せず本に埋もれて暮らした。博識で官能的な懐疑家の彼は,同時代の象徴主義運動をその高貴な反俗性ゆえに愛し,これを擁護宣揚する論陣を張った。部分的真実しか信じない醒めた眼で語られる官能的な批評やエッセーは,中世ラテン詩から秘密の好色本にまで及ぶ。評論集《仮面の書》2巻(1896,98),《文学的散歩》5巻(1904-13)ほか著書は多く,小説や詩もある。
執筆者:清水 徹
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