ゲフィチニブ(読み)げふぃちにぶ(その他表記)gefitinib

デジタル大辞泉 「ゲフィチニブ」の意味・読み・例文・類語

ゲフィチニブ(Gefitinib)

抗癌剤こうがんざいの一つ。分子標的治療薬一種で、非小細胞肺癌ひしょうさいぼうはいがんの治療薬として使用される。商品名イレッサ。平成14年(2002)、英国の製薬会社アストラゼネカが、世界に先駆けて日本発売細胞増殖を促進する上皮成長因子受容体チロシンキナーゼの働きを阻害することによって、癌細胞がんさいぼうの増殖を抑える。急性肺障害・間質性肺炎などの重い副作用を引き起こす場合がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゲフィチニブ」の意味・わかりやすい解説

ゲフィチニブ
げふぃちにぶ
gefitinib

抗悪性腫瘍(しゅよう)薬。製品名は「イレッサ」で、イギリスのアストラゼネカ社により合成、開発された分子標的薬。悪性腫瘍細胞の増殖、維持に関与している上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼを阻害する。非小細胞肺癌(がん)に劇的に効果が認められたことから2002年(平成14)7月世界にさきがけて日本で承認された。適応は手術不能または再発非小細胞肺癌。白色粉末で、製剤錠剤(250ミリグラム)。1日1回250ミリグラムを経口投与する。比較的ゆるやかに吸収され、食事の影響は受けない。

 副作用は、発疹、下痢(げり)、掻痒(そうよう)症、皮膚乾燥など。重大な副作用として、急性肺障害、間質性肺炎、重度の下痢、脱水、中毒性表皮壊死(えし)融解症、肝炎、血尿、急性膵炎(すいえん)がある。

 本剤は非小細胞肺癌患者の約10~20%に腫瘍縮小効果を示し、女性、非喫煙者、腺癌、東洋人では効果を示す割合が高い。また、EGFR遺伝子変異をもつ非小細胞肺癌に対しては70~80%程度の患者に腫瘍縮小効果を示す。化学療法との併用は効果がない。

 本剤発売後、間質性肺炎で死亡する例が日本で多発し問題となったが、本剤投与開始後4週間は入院させて、重篤な副作用発現に関する観察を十分に行うことで、対策がなされている。間質性肺炎の発現時期は治療開始後約2週目をピークに約2か月で、死亡率が高く、発生頻度は5.8%。発現は喫煙者、男性、化学療法歴を有する者、低酸素血症を有する者、塵肺(じんぱい)、扁平(へんぺい)上皮癌を有する者などに多く、初期症状は発熱、乾燥咳嗽(がいそう)(せき)、息切れ、呼吸困難等である。

[幸保文治]

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