改訂新版 世界大百科事典 「コッコリス」の意味・わかりやすい解説
コッコリス
coccolith
北大西洋の深海堆積物より発見された円盤ないし小判状の方解石に対しT.H.ハクスリーが命名したもの(1858)。後に,これは石灰質ナンノプランクトンと総称されるグループの一員で,コッコリトフォリーダCoccolithophoridaと呼ばれる,ハプト藻類に属する単細胞の浮遊性藻類の分泌したものであることが判明した。現生のコッコリトフォリーダはCoccolithus pelagicusなど150種以上に達するが,少数種を除き,北極海および南極海以外の大洋水の表層約150mを占める透光帯において光合成を営み,繁殖している。海水中での密度は水域や季節により変化するが,1l当り数万ないし数十万個が普通で,オスロのフィヨルドのように1300万個という記録もある。コッコリスは8個ないしそれ以上が集合して細胞を包み1個体を形成する。それをコッコスフェアと呼ぶ。死後,遺骸はほとんどコッコリスに分解して堆積し,石灰質の軟泥をつくる場合がある。コッコリスの大きさは1~15μm程度であり,多数の方解石の小結晶の規則的集合により構成されている。なお,似た発音をもつコッコリトゥスCoccolithusはコッコリスをもつ生物,すなわちコッコリトフォリーダに所属する属名である。コッコリトフォリーダはコッコリスの形態,その細胞上の配列,細胞の形態などにより分類される。ジュラ紀初期より化石の記録があるが,海成堆積物中に豊産し,種類が多く,進化速度が早くて,分布も汎世界であるため,示準化石として重要な役割を演じている。ヨーロッパの白亜紀チョークの主要構成物としても知られる。星形や雪の結晶状を呈するディスコアスターdiscoasterは,第三紀の代表的グループの一つである。
執筆者:高柳 洋吉+千原 光雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報